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日外会誌. 124(5): 391, 2023

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特集

外科医によるこれからの癌薬物療法―最新知識と安全で効果的な遂行のコツ―

1.特集によせて

大阪大学医学部附属病院 がんゲノム医療センター

西田 尚弘



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癌センターや一部の大学病院では,腫瘍内科が化学療法を担う施設も増えてはきているが,全国的には,現在でも外科医が化学療法まで行っておられる施設の方が主体であろう.外科治療と薬物療法は,癌を制御するという目的を達成する上で,車の両輪のような存在である.近年の外科手術後の根治性向上に術後補助化学療法が貢献しているのは明確であるし,進歩した薬物療法はこれまで切除不能と考えられていた症例をコンバージョン手術に導く.つまり,癌薬物療法は,外科手術と相反する治療手段ではなく,逆に外科手術の可能性,価値を高めるものと位置付けることができる.外科医自身が化学療法まで行うことは,業務の負荷という面においては当然ながらマイナスではあるが,正確なエビデンスに基づいた上で,外科医ならではの熱意と独特の視点で化学療法を遂行できることは大きなメリットである.そして何よりも患者にとって自分のお腹(胸)を切ってくれた(くれる)主治医に対する信頼は絶大であり,同じ主治医に化学療法まで診てもらうことは,患者の理解や満足度向上にも繋がるケースも多いと思われる.本特集では 「外科医による癌薬物療法 最新知識と安全で効果的な遂行のコツ」というテーマで,最新のエビデンスの紹介にとどまらず,支持療法の工夫や,外科医だからこそわかる手術介入のタイミングの見極めなど,日常診療において化学療法を効果的に行うための工夫をご紹介する.執筆者は癌薬物療法の面でも最前線で活躍される日本を代表する外科医の先生方であり,手術と化学療法の綿密な連携を読み取っていただければ幸いである.

 
利益相反:なし

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