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日外会誌. 124(3): 304-306, 2023

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印象記

2022 Japan Exchange Fellowとしての第108回ACS会議参加および米国施設見学

慶應義塾大学医学部 外科学教室

田中 真之



キーワード
Japan Exchange Fellow, ACS会議, 米国施設見学

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I.はじめに
日本外科学会より2019 Japan Exchange Fellow に選出されましたが,コロナ禍で延期となっており,この度2022 Japan Exchange Fellowとして第108 回 American College of Surgeons(ACS)会議への参加および発表,そして米国施設見学という極めて貴重な機会を頂きました.ここに感謝の意を込めて謹んで印象記を報告させて頂きます.

II.第108回ACS Clinical Congress
第108回ACS Clinical Congressは2022年10月16日から20日までの5日間,米国California州San DiegoにあるConvention Centerで開催され,レセプションなどは近くのGrand Hyattホテルで行われました.今回のテーマは“Surgeons Sowing Hope”となっており,レジデントやフェローのための外科育成プログラムなどの教育的なセッションが多く,一般外科医のクレジットとなるセッションも設定されており,日本の学会と比較してセッションの目的がポジションごとに設定されており,実践的な印象を受けました.私は膵臓外科のセッションを中心に参加し,内科・外科の権威者によるmultidisciplinary lectureから,若手外科医による自施設の膵臓癌への取り組みまであり,幅広くカバーされていました.私はExchange Fellowとして招待され,VIP registrationをさせていただき,大変光栄でした.International Relations Committee MeetingやACS 主催の多くのReception に参加させて頂きました.私以外に各国から様々なプログラムでInternational Guest Scholarが参加されており,MeetingやReceptionを通して,その方たちと親しく交流させて頂き,彼らの母国の医療の現状を知ると共に,意欲の高さや行動力に大変感銘を受けました.また,The ACS International Scholars and Travelers 2022というセッションで,日本の外科医のトレーニングプログラムについて発表する機会を与えていただきました.このセッションでは,各国での外科医療の現状や自分が従事しているプログラムの紹介が行われておりました.各国の抱える問題を念頭に置きながら取り組んでいるプログラムは細分化および専門化されており,教育プログラムの重要性を改めて認識することができました.会期中,MD Anderson Cancer Center, Department of Surgical Oncologyの生駒成彦先生と米国と日本における肝胆膵外科医としての今後の展望について議論する機会がありました.米国の新規性の追及,日本の安全性の追及という対照的な両国の意識の違いを理解した上でわれわれは何をすべきかが主なトピックでした.

III.施設見学University of Colorado Anschutz Medical Campus
今回私のメンターとして対応してくださったColorado University Surgical Oncology division chiefのProf. Marco Del Chiaroと相談して,Colorado Universityの施設見学をさせていただくことにしました.COVID-19により全米で見学中止となっている施設がある中,Colorado Universityは私を受け入れてくださいました.ただし,施設内に入るためにCOVID-19のワクチン接種証明のみならず,麻疹・風疹・水痘・ムンプス・百日咳・結核のワクチン接種証明やドラッグスクリーニングテストが必要であり,さらに院内感染対策についてのeラーニングが課されました.渡米前後に急遽それらの対応に追われましたが,Department of SurgeryのchiefであるProf. Richard SchulickとProf. Marco Del Chiaroが熱心に対応してくださり,無事施設見学の許可がおりました.ここでは臨床に力を入れていることもさることながら東京医科歯科大学の菅原俊喬先生のように海外から留学しているclinical research fellowが臨床論文に従事しており,科として個人として効率よく業績を残すシステムが構築されている印象を受けました.
また,手術見学のみならず,全米の第一線でご活躍されている先生を招聘した講演会である外科全体としてのGrand Conferenceへの参加,肝と膵それぞれで術前症例を検討する肝胆膵チームのMultidisciplinary Conferenceへの参加,さらには肝胆膵外科医である私の現況について発表させていただく機会をいただきました.手術は生体肝移植,ロボット肝切除,ロボット膵切除を見学させていただきました.Prof. Elizabeth PomfretがInternational Liver Transplant SocietyのPresidentであることから,Colorado Universityは肝移植に精力的で,本施設では年間100件の肝移植を行っており,そのうち10例が生体肝移植とのことでした.限られた人手で役割分担がしっかりされており,移植がスムーズに行われておりました.ロボット手術においては腹腔鏡手術からの移行期のようで,われわれ日本が直面している問題点や今後の可能性について共有することができ,有意義な時間を過ごすことができました.また,本施設は切除不能局所進行膵癌に対するconversion surgeryを積極的に行い,良好な成績を収めております.私の発表で局所進行膵癌に対する今後の展望について取り上げたこともあり,Colorado Universityの先生方と熱くディスカッションすることができました.
夕食はProf. Del Chiaroのご自宅やレストランにてProf. Schulickご夫妻とProf. Del Chiaroご夫妻と貴重な時間を過ごすことができ,また週末はRoxborough State Parkに連れて行っていただき,大変手厚くもてなしていただきました.あいにくMountain Lionに遭遇できませんでしたが,気持ちよくハイキングでき,コロラドの自然を存分に味わうことができました.

IV.おわりに
このような名誉ある大変貴重な機会を与えて頂きました湊谷謙司教授をはじめとする日本外科学会国際委員会の方々,施設見学に際して様々な準備をして頂いたACS担当秘書のMr. Tony Ortiz,充実した施設見学を調整して頂いたProf. Richard SchulickとProf. Marco Del Chiaroに誌面をお借りいたしまして深く感謝申し上げます.また,Japan Exchange Fellowの応募に際し,御推薦を賜りました慶應義塾大学 一般・消化器外科 北川雄光教授をはじめご支援頂きました医局員の先生方に心より感謝申し上げます.
今回の経験を生かして,国際交流を深め,今後の外科学の発展に尽力致します.

 
利益相反:なし

図1 図2 図3 図4 図5

図01図02図03図04図05

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