日外会誌. 124(3): 292-296, 2023
手術のtips and pitfalls
Overlap法
久留米大学 外科 藤田 文彦 , 仕垣 隆浩 |
キーワード
体腔内吻合, Overlap法, 結腸切除術
I.はじめに
腹腔鏡下結腸切除術における標準的な吻合法は,体外での吻合であるが,最近では体腔内吻合の報告も多くみられるようになり本邦においても導入する施設は増加傾向にある.体腔内吻合のメリットとしては,手術創の縮小や標本を取り出す開腹部位が選べること,さらには術後疼痛の軽減といったことが報告されている1).また,特に右側結腸の手術など吻合する部位によっては,腸管の剥離範囲が必要最小限にできる点も有利といえる2).体腔内で吻合する方法には,機能的端々吻合やOverlap法,デルタ吻合法などいくつかの吻合法があるが,われわれはOverlap法を選択している.その理由として,腸管の向きが順蠕動方向となり生理的であること,吻合部に緊張がかかりにくいこと,比較的血流のよい部分で吻合ができることなどがあげられる.いずれの方法においても,腸間膜の処理方法や吻合時の器械挿入口の開け方,器械挿入方法などいくつかのポイントがあり,それぞれのチームにおいてある程度の定型化を行っておくことが望ましい.また,ポート配置や自動縫合器のカートリッジの選び方などに関して適切な方法を知ることで手術時間は短縮できる.体腔内吻合のデメリットとしては,腹腔内汚染や癌細胞の腹腔内散布などがあげられるが,海外では長期予後に関しての報告3)も出てきており,ある程度の安全性は証明されつつある.われわれの施設では術前腸管処置として通常の大腸手術と同様,mechanical preparationのみを行っているが,最近ではchemical preparationを行うことでsurgical site infectionを予防するという施設もある.いずれにしても,術中に可能な限りの対策を行うことは必要であろう.そして,本邦においては2022年4月よりロボット支援下の結腸癌手術も保険適応となった.ロボット手術では,鉗子の自由な操作性と多関節機能を活かせるので,体腔内吻合を行う症例が増えてくる可能性がある.今後,手術手技の有用性や短期・長期成績などに注視していく必要性があると思われる.
利益相反:なし
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