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日外会誌. 124(1): 96-98, 2023

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定期学術集会特別企画記録

第122回日本外科学会定期学術集会

特別企画(7)「外科発展の礎―外科志望者増加のための取り組み」5.手術体験実習は外科医を増やすか?―Surgical labの進路選択に与える影響の評価―

1) 大分大学 消化器・小児外科学講座
2) 大分大学 総合外科・地域連携学講座
3) 大分大学 卒後臨床研修センター
4) 大分大学 解剖学講座

白下 英史1) , 川﨑 貴秀2) , 河野 洋平1) , 増田 崇1) , 平下 禎二郎1) , 赤木 智徳1) , 鈴木 浩輔1) , 二宮 繁生1) , 遠藤 裕一1) , 柴田 智隆1) , 上田 貴威2)3) , 當寺ヶ盛 学1) , 衛藤 剛1) , 白石 憲男2) , 濱田 文彦4) , 猪股 雅史1)3)

(2022年4月16日受付)



キーワード
手術体験実習, Surgical Lab, 外科教育, 学生教育

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I.はじめに
当教室での若手育成の目標は,「Science(知識)」,「Skill(技術)」,「Spirits(思いやりの心)」の“三つのS”を有す全人的医療人であり,地域を愛し(地域医療貢献),グローバル感覚を持つ(国際貢献)外科医の育成に取り組んでいる.外科医の魅力を伝えるためには,早期から手術手技を体験することが重要と考えている1)2).その取り組みの一つとして2nd stageの学生実習において,大学や連携施設での手術参加やDry box,Virtual reality(VR)を用いたトレーニングに加え,学内に専用ラボを設立し,2015年より動物を用いた手術体験実習(Surgical lab)をカリキュラムに導入している.さらに,外科専攻医に対しては,2020年よりCadaver surgical training(CST)を取り入れた手術教育を行っている.
今回,教室での外科手術教育に関しての取り組みを紹介し,Surgical lab導入が学生の進路選択に与える影響についてアンケート調査および研修終了後に選択した専門領域から評価した.

II.外科手術教育の実際
医学生は,大学や連携施設での手術参加に加えて,スキルスラボでの縫合結紮やDry boxトレーニング,VRによる基本手術手技の習得を行った後,Surgical labに参加する.Surgical labでは,生体での剥離や切離,止血操作,エネルギーデバイスの操作を学び,一連の手術操作の体験や手術臨場感を味わうとともに,外科手術の理解と外科の魅力を感じてもらっている.
外科専攻医は,Surgical labで,基本的手術手技の課題の把握と手術チームとしてのマネージメントを学び,CSTでは,臨床解剖や,定型的手術操作を理解するとともに腹腔鏡手術だけでなく開腹手術のトレーニングも目的としている.

III.Surgical lab実習について
大分大学では,2015年に手術手技の習得や医療チームの育成,医療デバイスの開発を目的として,大型の動物を扱える専用のSurgical lab「Surgical Operation Laboratory for Innovation and Education(SOLINE)」を開設し,開設当初より2nd stageの学生実習に取り入れ,2021年度より外科専攻医のトレーニングにも導入している.学生実習では,事前に外科医からの手術手技に関するレクチャー,獣医師からの解剖・倫理の講義を受講する.手術実習では,学生は術者,助手,スコピストをそれぞれ交代で担当し,豚に対して腹腔鏡下に直腸切除術,胃切除術,胆嚢摘出術を行う(図1).

図01

IV.学生に対するアンケート調査
2019年および2020年にSurgical labを経験した学生40名を対象とした.Surgical lab経験前の志望診療科,経験後の満足度,外科への興味についてのアンケート調査を行った.男性27名,女性13名が消化器外科での実習を選択した.実習開始時点では外科(消化器外科,呼吸器外科,乳腺外科,心臓血管外科,小児外科)志望11名,外科系志望8名,内科系志望6名,未定15名であった.Surgical lab経験前に実習に期待するものとしては,実際に手術を体験したいというものや臨場感を感じたい,外科に向いているかどうかの判断の材料にしたいといった意見が多くみられた(図2).
Surgical lab終了後のアンケートでは,91%が外科への興味が増したとの回答であった(図3).

図02図03

V.実習経験者の進路
2015年から2018年までにSurgical labを経験した41名の医師の選択した専門領域を調べた.研修終了後の進路選択に関しては,Surgical labを経験した41名の医師のうち,17名(41%)が研修終了後外科を専攻していた.例年約10%の研修医が外科を専攻している現状を考えると満足すべき結果と思われた3)

VI.おわりに
教室での外科手術教育に関しての取り組みを紹介した.Surgical labでの手術体験は,学生の満足度が高く外科の魅力を肌で感じるきっかけになると思われた.Surgical labを取り入れた学生実習プログラムは外科専攻医を増やすのに効果的と思われる.

 
利益相反:なし

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文献
1) O’Herrin JK, Lewis BJ, Rikkers LF, et al.: Why do students choose careers in surgery? J Surg Res, 119(2): 124-129, 2004.
2) Drosdeck J, Carraro E, Arnold M, et al.: Porcine wet lab improves surgical skills in third year medical students. J Surg Res, 184(1): 19-25, 2013.
3) 日本専門医機構ホームページ.2021年3月1日. https://jmsb.or.jp/senkoi/#an09

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