[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (527KB) [全文PDFのみ会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 124(1): 2, 2023

項目選択

会員へのメッセージ

日本外科学会コロナウイルス対策委員会の活動報告

日本外科学会コロナウイルス対策委員会副委員長,北海道大学大学院消化器外科Ⅰ 

武冨 紹信



このページのトップへ戻る


 
2020年中国武漢に端を発した新型コロナウイルスはまたたく間に世界中に広がり,本邦では2,340万人以上の感染者と47,800人を超える死亡が報告されている(2022年11月現在).新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は発生当初その病態が不明であり,感染者対応も手探りの状態が続き診療体制に多くの支障をきたした.2020年3月末に厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部から「限られた医療資源を,当面の間,新型コロナウイルス感染症に重点化・集約化する必要があり,医師が延期可能と判断した予定入院・予定手術については延期を要請する」という事務連絡が発出されるに至り,外科医療現場で混乱を極めた.そこで日本外科学会ではCOVID-19についての最新知識の啓蒙と外科医療における効率的な対策について発信するため,2020年3月にコロナウイルス対策委員会を組織し活動を開始した.
これまで,同委員会では2020年4月1日に手術トリアージや周術期対策についてまとめた「新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言」,4月9日に「全身麻酔管理下外科手術における新型コロナウイルス核酸検出の保険収載に関する要望書」,4月29日に日本医学会連合とともに「緊急提言:進行する医療崩壊をくい止めるために」を発出した.さらに,パンデミック第1波の収束をうけ5月22日に「新型コロナウイルス感染症パンデミックの収束に向けた外科医療の提供に関する提言」をまとめた.また,サージカルスモークの医療従事者健康被害リスクや医療者のメンタルサポートについてなど,COVID-19において外科医療に有用と考えられる情報を適宜発信してきた.これらの情報は日本外科学会ホームページの新型コロナウイルス特設ページにまとめてある.さらに,待機手術に対する手術トリアージや周術期および手術領域別の注意点などについて総論および各論からなる論文をまとめ公表した(Mori M et al. Surg Today 2020).また,厚労科学研究費の助成を受け,NCDデータを利用しコロナ流行前(2018~2019年)と比較しコロナ流行後(2020年)の主要20術式の手術数が全国で約10~15%減少していたことを報告した(Ikeda N, et al. Surg Today 2022).また直腸低位前方切除や肺切除などの癌手術や心臓弁置換術などは減少しているものの,膵頭十二指腸切除や大動脈弓部置換術,小児虫垂切除などは手術数に変化なく,術式により減少の程度に違いがあることが明らかとなった.これは代替治療の有無や緊急性などに基づき適切な手術トリアージがなされた結果であると考えられる.
本委員会では,今後もコロナ流行による外科医療への中長期的な影響を検討するとともに,将来的に発生が予測される未知の感染症によるパンデミック下でも適切な外科医療を行うことができる医療体制を整えるための提言を行っていく予定である.

 
利益相反:なし

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。