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日外会誌. 123(5): 501-502, 2022

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定期学術集会特別企画記録

第122回日本外科学会定期学術集会

特別企画(3)「男女を問わず外科医が輝き続けるために」
6.ステレオタイプ・スレットという問題とニュースレターの果たす役割

1) 岡山済生会総合病院 外科
2) 思誠会渡辺病院 
3) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科学
4) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科呼吸器・乳腺内分泌外科
5) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学

竹原 裕子1) , 溝尾 妙子2) , 小林 純子3) , 坂本 美咲1) , 新田 薫1) , 工藤 由里絵1) , 安井 和也5) , 菊池 覚次5) , 黒田 新士5) , 吉田 龍一5) , 岡崎 幹生4) , 枝園 忠彦4) , 山根 正修4) , 小谷 恭弘3) , 豊岡 伸一4) , 笠原 真悟3) , 土井原 博義4) , 藤原 俊義5)

(2022年4月14日受付)



キーワード
男女共同参画, ジェンダーバイアス, ステレオタイプ・スレット, ニュースレター, アンコンシャスバイアス

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I.はじめに
岡山大学では十数年前より,外科3講座で外科マネージメントセンターを設立し,若手医師のリクルート,教育,新専門医制度の外科研修のマネジメントを担当している.
その中で女性外科医,子育て世代の男性外科医および働き方改革・男女共同参画に興味のある外科医を対象に,「科を超えた交流」「キャリア支援」「外科全体の意識改革」を目的としたワーキンググルーブを約2年半前に立ち上げ,様々な活動を行っている(URL: http://okayama-u-surgery-program.jp/grapes/).

II.GRAPESの活動
GRAPESの活動として,年に2回の交流会の開催,専攻医研修中に出産をした場合の個別支援,メーリングリストでの情報共有,学生・初期研修の相談への対応,学内セミナーでの男女共同参画セッション,産育休制度などについての施設調査や専攻医へのオリエンテーションを行っている.現状の活動の問題点としては指導医の参加や後進の育成が困難であることが挙げられる.
われわれの活動の一つに「ニュースレター」がある.年4回くらいのペースで発行し,育児経験や留学経験の共有,学会や手術に関する情報の共有のほかに,専門医取得や男女共同参画に関する情報の共有を行っている.

III.女性外科医を取り巻く無意識のジェンダーバイアス
女子学生,初期研修医から「家庭と仕事の両立」に関する質問は多い.「女性はみんな幻の赤ちゃんを抱いている」という言葉がある.結婚,妊娠,出産,育児をする前から女性は安全策をとろうとする傾向にあり,上司はそれを想定して部下を配置することがある. これはステレオタイプに基づく無意識のジェンダーバイアスにより生じる問題である.
日本は女性リーダーの少ない国である.事実,医学部においても女性教員比率は40年間で比率は10.0% から 21.1%に増加しているが,1980年 ~1992年の間で教授職は2%以下で推移し,2004年以降も,10%以下にとどまっている1).そこにはガラスの天井(Glass celling)問題がある,
その原因の一つとして,Stereotype Threat(固定観念による脅威)が作用することが女性からリーダーになる意欲を低下させるという説がある.

IV.Stereotype Threatとは
Stereotype Threatとは,固定観念で自分を認識してしまうことで,実力が発揮できなくなる心理学的作用である.Stereotype Threatを抱くと,ストレスやネガティブな気持ちの増強,メンタリティの強さ・やる気の低下が起こり,進路選択に影響を与えたり,女性がリーダーシップを避けたりする原因になりうる.
Stereotype Threatの存在を伝えることやアイデンティティを保てるようにアドバイスすることで意識改革や行動変容が起こり,その負の作用から解放されることが過去の報告から証明されている2)
そのためには情報を得る手段が必要であり,ニュースレターによる情報提供はその一助になれるのではないかと考えている.

V.今後の課題
しかし,ニュースレターという媒体は知識・内容に作成者のバイアスがかかることへの懸念がある点,一方通行なので,伝達力は評価できない点,表現力に限界がある点が今後の課題として挙げられる.

VI.おわりに
ジェンダーステレオタイプを認識し,意識を変容することで,女性医師のみならず,男性医師にとっても働きやすい環境を実現できるのではないかと考えている.本来的には医師の生涯教育の一環として学生,研修医,専攻医,指導医すべての立場でこの問題を認識する機会を持つことが望まれる.

 
利益相反:なし

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文献
1) Kono K, Watari T, Tokuda Y, et al.: Assessment of Academic Achievement of Female Physicians in Japan. JAMA Netw Open, 3(7): e209957, 2020.
2) Filut A, Kaatz A, Carnes M:The Impact of Unconscious Bias on Women’s Career Advancement. The Sasakawa Peace Foundation Expert Reviews Series on Advancing Women’s Empowerment, 2017.

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