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日外会誌. 123(5): 468-470, 2022

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定期学術集会特別企画記録

第122回日本外科学会定期学術集会

特別企画(2)「外科医の働き方改革と特定行為研修修了者の協働」
1.加古川中央市民病院における「外科医の働き方改革」

加古川中央市民病院 外科

金田 邦彦 , 金子 達也 , 安田 圭佑 , 藤本 優果 , 神尾 翼 , 滝本 大輔 , 前田 詠理 , 秋田 真之 , 石田 諒 , 森川 達也 , 西村 透 , 阿部 紘一郎 , 上月 章史 , 田中 智浩

(2022年4月14日受付)



キーワード
働き方改革, タスクシフト/シェア, 医療事務作業補助者, 特定行為修了者

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I.はじめに
国は,2040年の医療体制提供を見据えて,1.地域医療構想の実現に向けた取組 2.医療従事者の働き方改革 3.医師偏在対策を三位一体で推進し,総合的な医療提供体制改革の実施を目指している.その中で医師の働き方改革は,2024年4月から適応される.本稿では当院で取り組んできた「働き方改革」の現状を紹介し,現時点での問題点や今後の方向性について述べる.

II.当院の現状
当院は,兵庫南部にある加古川市を中心とする東播磨圏域の中核病院で,高度急性期病院として地域医療に貢献するとともに当圏域の救急医療を支えている.年間の救急車受け入れ台数は7,600台で,筆者の所属する消化器外科も緊急手術が年間400例を超え,外科手術症例数の30%近くを占める非常に忙しい病院である.
当院における医師の1カ月平均の時間外労働時間は,消化器外科医,心臓外科医が突出して多く,中には100時間を超える超過勤務を複数月行っている医師も存在する(図1).

図01

III.当院における働き方改革への取り組み

1 医師・病院幹部の意識改革
「医師の働き方改革」にあたって第一の大きな障壁は「医師の長時間労働に対する意識の低さ」があげられる.筆者が若いころは病院に長時間とどまることが美徳のように思われていたが,まずはこの医師の意識改革が必要で,それに加え病院幹部が「働き方改革」に取り組むという姿勢を示すことも重要である.

2 医師の労働時間の正確な把握
医師の働き方改革をすすめるにあたって現状を認識するために,まずは医師の労働時間の正確な把握と管理を行うことが必要である.当院では昨年から医師の正確な労働時間を把握するために勤怠の管理を厳格に行い,時間外労働の内容を勤怠に反映するシステムに変更した.特に労働と自己研鑽の区別が難しいため,医師に具体的な事例を提示して両者を明確に区別できるようにした.こうすることで労働時間に対する意識付けはできたが,実際の労働時間の短縮効果は限定的で,抜本的対策が必要であると考えられ,院内でのタスクシフト/シェアを推進することとした.

3 タスクシフト/シェア
医師から他職種へのタスクシフトとして,具体的には,医療事務作業補助者の業務拡大,看護師による化学療法時の静脈ルートの確保やRI注射の実施,薬剤師による化学療法における支持療法の主体的関与,他職種による種々の検査の説明など様々なことが行われた.
タスクシフトの大きな柱となる医療事務作業補助者は,現在76名在籍し主として外来に配属され外来業務の補助をしている.具体的な業務としては,各種代行オーダー・カルテ記載・診断書作成・主治医意見書・NCD登録の補助があげられる.いずれの業務も最終的には医師のチェックを必要とするが,医師の事務作業が減るために外来を中心として医師の負担軽減に大いに役立っている.医療事務作業補助者を配置することで医師の診察時間および診断書や返書などの文書作成に要する時間が短縮した(図2).
タスクシフトのもう一つの柱に特定行為研修制度を修了した看護師の活用があげられる.特定行為は,専門的な知識と技能を持った看護師が診療の補助として行う行為で医師負担軽減の切り札として位置付けられている1).特に外科領域では,呼吸管理や循環動態・疼痛・栄養管理・創部管理の補助が期待されている.
当院では3名の修了者が在籍している.ICUに配属された看護師が,呼吸器の設定・動脈血液ガス分析・気管カニューレの交換などの特定行為を行っている.また外科系の病棟中心に病棟横断的に配属されている修了者が,創傷管理・創部ドレーン管理を行っているが,その活動はまだ限定的である.今後特定行為修了者がさらに活躍するためには,病院内での認知の向上,同一部署での複数配置,組織としての活用戦略を明確に描く必要があると考えられる.

4 外科医間のタスクシェア
タスクシフトは主として医師の業務を他職種に移譲することにあるが,特に多忙な外科医間でのタスクシェアのためには,複数主治医制・交代制を導入する必要がある.外科では手術をした主治医が責任をもって患者に対応することは当然であるが,主治医不在の時でも他の医師が責任をもって対応できる体制が必要である.外科チーム全体で患者を診るという意識改革が各外科医師に求められ,そうすることで医療の質を落とさずに休日は病院に来ない日を作ることができ,忙しい中でもon offのメリハリの利いた働き方ができると考える.
最後にシニア医師の活用について考えたい.これまではシニア外科医は,定年後は管理職や関連の施設への移動などで第一線を離れる方が大部分であった.今後は,多様性のある働き方として定年となったシニア医師も縁の下の力持ちとして側面から現役外科医の負担を軽減できるような体制作りをすべきである.さらに忙しい外科医の肩代わりをするために,日本病院会が認定している病院総合医2)を活用することも一つの方法である.病院総合医は病棟のゲートキーパー役を務め,日勤帯は手術や検査で忙しい医師の病棟業務の肩代わりを担ってもらう.専門的な知識や経験の豊富なシニア医師や病院総合医を有効に活用することが若い世代の外科医の負担軽減につながると思われる.

図02

IV.おわりに
医師の中でも特に激務となっている「外科医の働き方改革」を進めることで,医学生や初期研修医に外科医として働きやすく魅力のある外科医像を示すことができれば少しでも外科医減少の歯止めにつながるのではないかと考える.

 
利益相反:なし

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文献
1) 厚生労働省.特定行為に係る看護師の研修制度の概要.2015年10月1日. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070423.html
2) 日本病院会 Japan Hospital Association. 2018年7月28日. http://www.hospital.or.jp/sogoi/pdf/sg_20180728_01.pdf

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