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日外会誌. 123(5): 439-443, 2022

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手術のtips and pitfalls

上川法

公益財団法人がん研究会有明病院消化器センター 胃外科

布部 創也 , 速水 克



キーワード
噴門側胃切除, 腹腔鏡下胃切除, 食道胃吻合, 観音開き法再建

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I.はじめに
噴門側胃切除術(PG)は,主に上部早期胃癌に対する機能温存手術である.術後生存期間やQOLの維持に関するエビデンスは乏しく,胃全摘術との比較も含め適応についての議論の余地は残されているものの,保険点数にも収載されるようになり,広く普及した術式の一つと考えるべきである.また,腹腔鏡下噴門側胃切除(LAPG)も2014年の改訂において保険収載されるようになっている.
当科においては残胃が2分の1以上残存する上部早期胃癌を基本的な適応としている.幽門側へのリンパ節転移が低いことを考慮し,穹窿部,食道胃接合部の進行癌も本術式の適応としている.噴門側胃切除を行う上での最大の問題は再建法の選択である.逆流防止機構を付加する必要があるが,標準的な再建法がないのが現状である1)
当院では観音開き法再建(上川法)を行っており,胃全摘術と比較し,栄養状態など良好な成績を報告している2).観音開き法再建は上川らにより報告された形態的,機能的再建方法であり,手縫いによる弁形成術により強力に逆流を防止する.食道下端が胃粘膜下層と胃漿膜筋層フラップとの間に埋め込まれ,胃内圧とフラップによる抵抗で吻合部が圧迫され逆流防止弁としての機能を発揮する.手縫いで行うことで吻合部の柔軟性が保たれ嚥下時の締め付けが少ないのも,バランスの良い再建法と思われる.またフラップで吻合部を被覆するので縫合不全発生率が低い点も大きな特徴である.手縫いで吻合を行うため鏡視下での吻合においては高度な縫合テクニックが必要である.特に高位の病変に対する本術式の適応では縦隔内での縫合操作が必要になりより難易度が高くなる.十分な鏡視下での縫合技術の修練が必要であろう.吻合部が高位になると逆流が増えるとの報告もあり3),埋め込まれる食道の長さをしっかりと確保し,フラップで吻合部を中心に広く被覆することで縦隔内でも逆流防止効果を発揮する.

 
利益相反:なし

図1図2図3図4図5図6

図01図02図03図04図05図06

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文献
1) Nunobe S, Ida S: Current status of proximal gastrectomy for gastric and esophagogastric junctional cancer: A review. Ann Gastroenterol Surg, 4: 498–504, 2020.
2) Hayami M, Hiki N, Nunobe S, et al.: Clinical Outcomes and Evaluation of Laparoscopic Proximal Gastrectomy with Double-Flap Technique for Early Gastric Cancer in the Upper Third of the Stomach. Ann Surg Oncol, 24: 1635-1642, 2017.
3) Kuroda S, Choda Y, Otsuka S, et al.: Multicenter retrospective study to evaluate the efficacy and safety of the double-flap technique as antireflux esophagogastrostomy after proximal gastrectomy (rD-FLAP Study). Ann Gastroenterol Surg, 3: 96-103, 2018.

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