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日外会誌. 123(3): 212, 2022

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会員へのメッセージ

National Clinical Database(NCD)の役割

一般社団法人National Clinical Database代表理事,東京大学消化管外科 

瀬戸 泰之



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National Clinical Database(以下,NCD)は,2010年専門医制度を支える手術症例データベースとして日本外科学会,日本消化器外科学会など10の外科系臨床学会が設立した(現在,社員14学会).10年を経て,わが国で行われている該当領域手術の95%以上が登録され,かつ信頼性が極めて高いビッグデータになっている.2011年から登録が始まり,初年度の登録症例件数は1,172,507例,登録施設数は3,374,診療科数は4,916でスタートした.2020年の登録症例数は約150万件(2019年 約156万件)で,登録施設数5,453,診療科数13,350,累計登録数は約1,431万件になっている.2012年から各種専門医システムにおいてNCDデータの利用が開始されており,専門医制度において,その中核をなしている.それまでの専門医試験では,膨大な症例(カルテ)記録を紙で試験会場に持参したものである.時に優に500枚を超えることもあり,その手間を経験しているものにとっては,その労力が省けていることだけでもNCDの役割,意義を理解していただけるものと思うが,現在の若手にはそれが当たり前のことになっているものとも感じる.
この間,ビッグデータを活用した様々な多くの解析,運用も成されている.手術リスク評価も可能となり,web上で患者情報と術式を入力するだけで手術リスクが瞬時に表示されるrisk calculatorシステムも現場で大いに利用されている.各施設の成績と全国平均との比較から自施設の客観的評価もできるようになっている.また,手術安全性を向上するために必要な取り組みに関しても重要な情報を報告している.最近では,手術短期成績だけではなく予後情報も含んだ癌登録データとしての機能も付加されており,今後,様々な癌腫の全国データの集積が期待されている.現時点では,乳,肺,食道,胃,肝,膵,前立腺,腎,膀胱,遺伝性乳癌卵巣癌症候群が癌登録としてNCDを活用している.今後,胆道癌登録も予定されている.そのような活動から,これまで多くの英語論文が一流医学雑誌でpublishされており,わが国の優れた治療成績を世界に発信する原動力になっている.保険診療上でも手術実施要件に活用されるなど,専門医制度,医療現場,academiaのみならず行政面においてもその意義が見出されている.
このビッグデータを支えているのが,現場で入力していただいている先生方や事務職の方々であることは疑う余地がない.Auditの結果においても,その正確性が示されており,それがまたNCDの信頼性の土台となっている.外科専門医を目指す諸君にとっては,煩雑で鬱陶しく感じられることもあると推察するが,間違いなく諸君の将来にも役立つものであるし,いつかNCDを活用した臨床研究のリーダーになることも目指して精進していただきたい.

 
利益相反:なし

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