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日外会誌. 123(1): 2, 2022

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会員へのメッセージ

日本がめざす遠隔手術(遠隔手術実施推進委員会より)

遠隔手術実施推進委員長,東海大学・医学部 

森 正樹



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2019年に厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下,オンライン診療指針)の改訂が行われた1).この改訂では,患者が医師といる場合のオンライン診療として,「情報通信機器を用いた遠隔からの高度な技術を有する医師による手術等」という項目が追加された.そこには,具体的な対象疾患や提供体制などに関し「各学会などが別途ガイドラインなどを作成して実施する」とも記載されており,国内の外科系学会が足並みをそろえて遠隔手術についての独自の基準を作る必要がある.
遠隔手術の開発は約20年前から行われてきた.しかし当時は通信環境がロボットによる操作や映像の信号をリアルタイムに送信するほど成熟しておらず,それら検討には特別なクローズドネットワークが利用されることが多かった.5Gを含む高速回線が民間事業者からも提供されるようになった現在,セキュリティーの問題さえ解決されればオープンネットワークを使った遠隔手術も技術的に可能となった.
オンライン診療指針をうけ,遠隔手術の社会実装にむけた開発推進を行う委員会として,日本外科学会に遠隔手術実施推進委員会が2019年に組織された.2020年にはAMEDからの支援を獲得し,研究活動を本格的にスタートさせた.本研究は,日本外科学会,日本内視鏡外科学会,日本ロボット外科学会等を中心とする学術団体,ロボット関連企業,通信関連企業などが参加する産官学が一体となったプロジェクトである.ロボットの遠隔操作による遅延の影響を明かにする「次世代ロボットに係る通信技術に関する研究開発」(課題責任者:九州大学 沖英次),SINET(学術情報ネットワーク:Science Information NET work)を使いロボット信号の送信限界を検討する「手術支援ロボットを用いた遠隔手術の実証研究」(課題責任者:北海道大学 平野聡),商用回線での遠隔手術を検証する「遠隔手術の社会実装に向けた実証研究」(課題責任者:弘前大学 袴田健一),その他,遠隔手術の経済性の検討,最終的に各学会からの代表も交えガイドラインを作成することを目標としている.
遠隔手術の目的は,高度な手術への患者アクセスの向上であると考えられてきた.時代とともに遠隔手術の目的が変わろうとしている.ロボット支援手術の技術が進み,ダビンチ以外のロボットも使用できるようになった.今後は日本を始め世界中から新しいタイプの手術支援ロボットがローンチされてくる.以前は同じ病院の先輩から技術を習得することが一般的であった.しかしこのコロナ禍の中でも現在の外科医は新しいロボットを使った手術を全国のエキスパートから習得する必要がある.オンラインで手術の指導や助手ができるようになれば,まったく新しい教育システムが確立され,ひいては地域の外科医不足の解消にもつながる可能性がある.日本外科学会として遠隔手術を推進することは非常に大切であると考えている.

 
利益相反:なし

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文献
1) 厚生労働省:オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30年3月)(令和元年7月一部改訂).2021年4月5日. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00010.html

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