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日外会誌. 122(6): 708-710, 2021

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定期学術集会特別企画記録

第121回日本外科学会定期学術集会

特別企画(5)「資源の集中と地域医療」
7.医療の集約化と地域医療について

伊賀市立上野総合市民病院 外科

毛利 智美 , 田中 光司 , 三枝 晋 , 吉山 繁幸 , 浦谷 亮 , 原 文祐

(2021年4月9日受付)



キーワード
地域医療, 地域医療構想, NCD, DPC

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I.はじめに
地域医療を支える地方の中核病院においては各医療機関が独立して充分な医療を提供できる体制にないことが多く,患者,医師双方にとり様々な不利益が生じていると思われる.医療資源の集中と地域医療について筆者が考える現状の問題点,解決策について述べる.

II.三重県の医療圏についての概要
三重県の2次医療圏は北勢医療圏,中勢伊賀医療圏,南勢志摩医療圏,東紀州医療圏からなる.筆者の勤務する病院はこの中の中勢伊賀医療圏の伊賀地区に存在している.三重県内の医療圏のタイプは東紀州医療圏が過疎地域型になる以外は地方都市型の分類となっている.県の報告によると,それぞれの医療圏がカバーする人口は表1に示す通りである.
また東紀州医療圏以外は各医療圏内で表1に示すとおりの区域に分かれており,各区域は図に占めす人口をカバーしている.三重県における地域医療構想はこの区域ごとに協議されている.伊賀区域は人口約17万人をカバーしている.伊賀区域の救急医療を担う病院は,公立病院2か所と民間病院1か所の計3か所である.全国平均の人口10万人当たりの病院勤務医師数は159.4人であるのに対して三重県における各医療圏の病院勤務医師数は大学病院を有している津区域が全国平均を上回っている以外はどの区域も表1に示す通り全国平均を下回っている.伊賀地域は医療過疎型といわれる東紀州医療圏の病院勤務医師数を下回っている.

表01

III.地域医療の問題点について
各医療機関に分散して医師が勤務していることにより時間外労働や待機日数の増加などにつながり,非効率な働き方をする必要が生じる.時には外科であっても診療科を超えて肺炎や心不全,不明熱などの入院患者を担当することもある.専門領域外の診療を行うことは時に医療過誤リスクを背負っての診療につながる.逆に患者は専門医不在の診療科においては居住医療圏内で専門医による診療を受けることができない.また専門医がいても,設備が整っていない場合は検査や治療を受けることができず,遠方の病院へ受診する必要が生じる.高齢患者の場合は遠方までの受診が不可能である患者も多く,居住医療圏での医療提供体制により受けられる診療内容が限られることにつながる.地域医療提供体制を充実させることは医師,患者双方に有益なことと思われる.

IV.地域医療構想
今後の人口減少・高齢化に伴う医療ニーズの質・量の変化や労働人口の減少を見据え,質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するためには,医療機関の機能分化・連携を進めていく必要があるという観点から各地域における2025年の医療需要と病床の必要量について医療機能(高度急性期 急性期 回復期 慢性期)ごとに推計し地域医療構想が策定されている.国は現在の医療提供体制の問題点として図1のように1.都市部での類似の医療機能を持つ医療機関の林立により医療資源の活用が非効率になっていること,2.医師の少ない地域での医療提供量の不足・医師の過剰な負担が生じていること,3.疲弊した医療現場は医療安全への不安にも直結することを挙げている.
国は2040年の医療提供体制の展望として,どこにいても必要な医療を最適な形で提供できること,医師・医療従事者の働き方改革で,より質が高く安全で効率的な医療が提供できることを掲げている.その実現のために2025年までに着手することとして,図1に示されているように,地域医療構想の実現,医師・医療従事者の働き方改革の推進, 実効性のある医師偏在対策の着実な推進を三位一体として進めることが必要とされている.
地域の医療需要の将来推計や報告された情報等を活用して,二次医療圏等ごとの各医療機能の将来の必要量を含め,その地域にふさわしいバランスのとれた医療機能の分化と連携を適切に推進するための地域医療のビジョンを策定し,医療計画に新たに盛り込み,さらなる機能分化を推進することが各都道府県に求められている.
医療需要推計方法はレセプトデータ,DPCデータ,2013年の地域別の将来推計人口を用いて推計されている.

図01

V.NCDデータ活用
外科においては医療需要推計のデータにNCDデータも活用することで,それぞれの地域の手術特性についてより正確に把握することが可能となると思われる.
NCDデータベースから,各地域医療構想圏内で完結すべき手術を想定しそれを実現するために必要な設備,専門医の配置数,専門医の教育プログラムなどを各学会が検討し地域医療を担う外科医を育てることで効率的な質の高い医療を提供することが可能になると思われる.
その地域に指導医,専門医が不在でその3次医療圏内で充足不可能な場合には,学会が専門医や指導医の就業を斡旋するなども検討するべきと思われる.

VI.おわりに
地域医療問題を解決するには地方行政と人事を担う医局,必要に応じて各学会が組織横断的にともに検討し各地域の住民にとって最良の医療を提供できるようにすることが必要と思われる.

 
利益相反:なし

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文献
1) 三重県地域医療構想(最終案): https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000719583.pdf(アクセス日:2021年3月18日)
2) 第32回社会保障WG (令和元年5月23日)資料 内閣府ホームページ: https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/ 20190523/shiryou1-1.pdf(アクセス日:2021年3月9日)

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