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日外会誌. 122(6): 670-673, 2021

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定期学術集会特別企画記録

第121回日本外科学会定期学術集会

特別企画(4)「情熱・努力を継続できる外科教育」
3.一般外科をローテートする初期研修医に対するハンズオン教育朝カンファレンスの導入:学習者と教育者の横断調査からのプログラム評価

沖縄県立中部病院 外科

桂 守弘 , 加藤 崇 , 神田 幸洋 , 伊江 将史 , 砂川 一哉 , 村上 隆啓

(2021年4月9日受付)



キーワード
ハンズオン, カンファレンス, ニードアセスメント調査, プログラム評価

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I.はじめに
わが国で行われた全国的なニードアセスメント調査によって,外科研修プログラムディレクターも研修医も共に,80%以上の割合で手術室以外でのトレーニング(training outside of the operating room;TOOR)が重要であると認識していることが分かったが,一方で定期的なTOOR機会が十分に提供されていると答えた研修医は,わずか13%であったと報告されている1).そこで,われわれは毎週金曜日の朝カンファレンスを完全に教育用の時間に割き,ハンズオン教育朝カンファレンスを2019年度に導入した.本研究では,導入初期段階としてのプログラム評価結果を提示し,今後の展望を示す.

II.当院の一般外科研修
当院は地方にある急性期病院で,毎年28人前後の初期研修医を志望科コースごとに採用している.2019年度は,卒後1年目研修医(Post Graduate Year 1;PGY1)は28人全員が,4~6週間ずつ一般外科をローテートした.PGY 2になると外科コースの初期研修医が3~4カ月ずつ,救急科コースの初期研修医が2~3カ月ずつ,プライマリケアコースの初期研修医が2カ月ずつローテートした.一般外科の指導医は6名で,外科後期研修医2~3名とのチームで年間900~1,000例の手術(うち緊急手術が約30%)および幅広い外科系救急疾患に対応している.

III.ハンズオン教育朝カンファレンス
われわれが新たに導入したハンズオン朝カンファレンスの構成は,朝7時半からの1時間のうち,イントロレクチャーは短時間(10~20分)で簡潔に行い,残りの時間は全てハンズオン形式として実技中心で研修医が実際に手や体を動かしてもらうことに重点を置いて行った.テーマはオンデマンドで研修医側から要望のあったテーマから,指導医側からの要望のあったテーマなどを柔軟に組み込んで選定した(表1表2).教育者は,一般外科指導医に加え,各診療科指導医やコメディカルスタッフ(臨床検査技師や皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC看護師))からの協力もいただいた.コメディカルスタッフからは,検査・手技時のマナーなどについても研修医へ教育を行った.2019年度は計13トピックのハンズオンカンファレンスを開催した.1例としては,WOC看護師からのミニレクチャー後にストマサイトマーキングの実際をデモンストレーションし(図1A),その後に研修医同士でストマサイトマーキングを実際に行い,最後はストマパウチの装着までを体験してもらった(図1B).その翌週には,ストマ造設の腸管モデルを使用したDry labのハンズオンを行い(図1C),シリーズとして理解しやすい工夫とした.

図01表01表02

IV.学習者と教育者の横断調査からのプログラム評価
2019年度の研修期間終了時に,無記名の横断的アンケート調査(ニーズ,習熟度に関する認識など)を行った.調査対象者は,学習者として一般外科をローテーションした初期研修医(計46名),教育者として指導医13名・WOC看護師2名・超音波検査士1名(計16名)から行った.回答率は学習者が87%,教育者が100%であった.学習者・教育者共に,TOORとしての教育カンファレンスの導入には好意的な回答であった.基本手技はPGY1と教育者の意見はほぼ一致していたが,やや外科的なアドバンストな内容になるとPGY1は現段階では必要性を感じていないことが分かった(表1).参加したカンファレンスで学んだ知識・技術の習熟度に関する自己分析では,PGY1と比べてPGY2では,学習者と教育者とのギャップ(意見不一致)がより少なかった(表2).志望科コースごとでの検討では,学習者のニーズが将来志望する科によって違いがあることが分かった.また,自由記載からは,志望科コースによってはTechnical skillだけでなく,Non-technical skillのニーズもあることが分かった.教育者のみに行った調査項目として,各ハンズオントピックが卒後どの年度にとって1番適切であったという質問項目においては,PGY2にとっても1番適切だと答えるトピックが約8割であった.

表01表02

V.考察と今後の展望
これまでon the job trainingに重きが置かれていた当院の研修においても,毎週の定期的なハンズオン教育朝カンファレンスは,TOOR機会の確保として学習者・教育者共に広く受け入れられたが,卒後年数や志望科コースによってニーズや習熟度に関する認識に多様性があることが分かった.今後は,学習者と教育者とのギャップ(意見不一致)が減るように,アンケート調査結果を基にこれまで行ったトピックのカンファレンス内容の改善,新しいトピックの導入など学習者のニーズに応じたテーマ設定などのプログラム改定を行っていきたい.また,教育者側も飽きずに継続してカンファレンスに参加できるような工夫も必要であると感じている.

VI.おわりに
2020年度以降もハンズオンカンファレンスは継続して行っており,今後は複数年にまたがるデータからプログラム評価の重要性をメッセージとして発信できればと考えている.

 
利益相反:なし

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文献
1) Poudel S , Hirano S , Kurashima Y , et al.: A snapshot of surgical resident training in Japan:results of a national-level needs assessment survey. Surg Today, 49: 870-876, 2019.

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