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日外会誌. 122(5): 549-551, 2021

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定期学術集会特別企画記録

第121回日本外科学会定期学術集会

特別企画(2)「高難度新規医療技術導入に対する取り組み」
7.高難度新規医療技術導入の運用の現状と問題点

1) 滋賀医科大学 医学部附属病院
2) 滋賀医科大学 医療安全管理部
3) 滋賀医科大学 外科学講座

清水 智治2) , 三宅 亨3) , 貝田 佐知子3) , 飯田 洋也3) , 田中 琢也2) , 萬代 良一2) , 生野 芳博2) , 野﨑 和彦2) , 田中 俊宏1) , 谷 眞至3)

(2021年4月8日受付)



キーワード
ロボット手術, インフォームド・コンセント, 医療安全管理, 特定機能病院, 外保連試案

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I.はじめに
特定機能病院等の高度な医療を担う医療機関において高難度の医療技術を導入した後に医療安全に関する重大な事案が相次いで発生したことを受け,2016年に厚生労働省によって医療法施行規則が改正され,高難度の医療技術を用いた医療を実施する際に当該医療の実施の適否について診療科の長以外の者が確認するプロセス等が特定機能病院の承認要件として義務付けられた1).当院では,2017年4月より診療の質管理室(後に,高難度医療・未承認医薬品等管理室に変更,以下,管理室と略)を設け,高難度新規医療技術の導入の管理を行ってきた.本稿では,その取り組み,現状と問題点について報告する.

II.当院の概要と医療安全管理体制
当院は,滋賀県唯一の特定機能病院であり,2019年度の診療実績は,新入院患者数14,676名,手術件数9,456件(麻酔科関与4,807件)であった.医療安全管理部は,専従の医師2名・看護師2名・薬剤師1名と,兼任の医師3名・看護師1名・臨床工学技士1名・事務職員2名で構成され,院内のあらゆる部門と連携をとりながら,医療安全の向上を目指して活動している.

III.当院での高難度新規医療技術等導入に関わる体制
診療科・診療部門からの高難度新規医療技術の申請は,管理室において受理し,審議の上,実施を認可している.管理室の構成員としては,室長は副病院長(医療安全等担当)が担当する.室員として,治療担当部門会議の委員長および議長7名と医療安全管理部長が担当している(図1).

図01

IV.高難度新規医療技術等導入時の流れ
診療科・診療部門からの高難度新規医療技術の申請があった場合に,申請書類の書式などを事務部門で確認を行い,治療担当部門会議にて当該医療技術を用いた医療の提供の適否,実施条件として報告すべき期間・件数,定期報告方法などについて審議がされた結果が,管理室に報告される.たとえば,手術に関連する高難度新規医療技術であれば,治療担当部門会議は手術部連絡協議会となる.各治療担当部門会議には,各診療科・診療部門より病棟医長やリスクマネジャーに相当する医療従事者および医療安全管理部員が出席しており,各専門領域の多角的視点から審議が行われる.管理室の室員による管理室会議にて各治療担当部門会議の意見を踏まえ,当該医療技術の提供の適否等について決定し,病院長および診療科長に対し審議結果を通知する.適切なインフォームド・コンセント(以下,ICと略)が行われるように説明同意書の監査や当該医療技術の診療報酬に関する検討のため医務担当部門も審議に加わる(図1).
有害事象の発生時には,管理室と医療安全管理部に迅速に報告する義務があり,当該医療技術の継続可否について各治療担当部門会議で検討される.また,診療科・診療部門からの報告とは別に,管理室からの指示に基づき,定期モニタリングが実施される.診療科・診療部門での当該医療技術に関わるカンファレンス記録,説明書・同意書の有無,記載内容の確認,手術記録の有無,有害事象の有無などが個別の症例について,各治療担当部門会議で詳細にチェックされ,当該医療技術の継続について検討される.
申請が必要とされる高難度新規医療技術としては,外保連試案の手術難度Eの技術および手術難度Dに該当するものとされる.「外保連試案2020」が刊行されたことにより,2021年4月に81例の高難度新規医療技術該当リストへの改訂が日本外科学会から発表されている2)
高難度新規医療技術では,患者のリスクも大きくなるため,充分なICの元で医療技術を提供する必要がある.ICに関する一般原則に加えて,当該医療の有効性,合併症の重篤性および発生の可能性などの安全性,提供するための設備・体制の整備状況,過去の実績,術者の専門的資格およびこれまでの経験について患者に説明を行う必要がある.当院では,管理室に審議の段階で説明同意書の提出を求め,各治療担当部門会議および診療情報管理室で適切なICが実施できるように管理をしている.また,医師がICを行う際に,異なる職種の医療者の同席が求められている.当院では,可能な限り同席をするように努めている.診療の状況により他職種の同席が不可能である場合もあり,同意書を受け取る際に看護師から患者および家族の理解度や不安などの情報収集をするよう心がけている.診療情報管理室が行った無作為抽出での手術の説明同意書の監査では約60%の症例で他職種の同席が確認されている.

図01

V.当院での実績,モニタリング結果と課題
高難度新規医療技術の実施状況としては,2017年4月より2020年8月までに45件を審査・承認を行った.既に7件は終了している.各治療担当部門会議の内訳は,手術部連絡協議会39件,光学医療連絡協議会1件,放射線部連絡協議会5件であった.診療科別では,外科4件,産婦人科13件,脳神経外科6件,循環器内科・泌尿器科4件,整形外科3件,その他5件であった.手術難度を見てみるとC 3件,D 18件,E 7件,該当なし11件であった.
患者影響レベル3b以上の合併症は2件あり,レベル5の発生はなかった.これらは管理室と医療安全管理部に迅速に報告され,各治療担当部門会議で当該医療の継続可否について検討され,継続不可となった事案はなかった.
定期モニタリングの結果として,2019年度に実施された新規医療技術12件では,説明書や同意書,手術記録,カルテ記載には問題は認められず,有害事象発生は8%であった.診療科内のカンファレンス記録に問題なしと判断されたのは58%であり,カルテ記載の充実が肝要と考えられ,診療科にフィードバックを行い改善に取り組んでいる.
当院では,診療科から自主的に申請された医療技術のみ高難度新規医療についての審議・評価を行っている.高難度新規医療技術に関する意識を高め,適切に申請できるように年一回は医療安全研修のトピックとしてとりあげて院内の医療従事者に周知することにより対応しているのが現状である.

VI.おわりに
当院における,高難度新規医療技術の実施の現状と問題点について報告した.今後も課題を一つずつ解決しながら,安全な高難度新規医療技術の提供に努めていきたい.

 
利益相反:なし

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文献
1) 高難度新規医療技術の導入プロセスにかかる診療ガイドライン等の評価・向上に関する研究班:高難度新規医療技術の導入にあたっての基本的な考え方( https://jams.med.or.jp/news/043_1.pdf, 2021/4/27URL取得)
2) 高難度新規医療技術該当リスト 外保連手術試案名(日本外科学会ホームページ: http://www.jssoc.or.jp/other/info/info20210418-01.pdf, 2021/5/19URL取得)

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