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日外会誌. 122(5): 538-540, 2021

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定期学術集会特別企画記録

第121回日本外科学会定期学術集会

特別企画(2)「高難度新規医療技術導入に対する取り組み」
3.当院における高難度新規医療技術の導入に対する取り組み

山梨大学 外科学講座第一教室

市川 大輔

(2021年4月8日受付)



キーワード
高難度手術, 新規医療技術, 医療安全

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I.はじめに
特定機能病院における重大な死亡事故の発生をうけ,高度の医療安全管理体制を目的として,高難度新規医療技術(高難度手術)を用いた医療提供の適否を決定する部門の設置とその遵守事項の明確化が義務付けられた1).当院における高難度新規医療技術の導入に対する取り組みを紹介する.

II.担当部門と申請フロー
山梨大学医学部附属病院医療の質・安全管理部内に,高難度医療技術の経験・知識を有する外科系診療科長を部門長とし,他の外科系診療科医師,手術室所属医師,ゼネラルリスクマネージャー(GRM)ならびに医事課安全管理担当者を構成員とする高難度新医療技術部門を新たに設置した.また,申請された高難度手術の提供における科学的妥当性等の技術的側面を評価する目的で医療行為安全小委員会を設置し,高難度医療技術の経験・知識を有する外科系診療科長を委員長として,他の外科系診療科長,内科系診療科長,手術部所属医師,医療の質・安全管理部所属医師,GRM,放射線治療部医師,医事課長を主な構成メンバーとし,申請内容によって当該領域に精通する委員を追加する形とした.一方,倫理的側面の評価については,医学部以外の教員や外部委員も含んだ既存の医療行為の倫理に関する専門委員会で審査することとし,それらの審査結果を踏まえて病院長が承認する申請フローとした(図1).
該当技術としては,「高難度新規医療技術の導入に当たっての医療安全に関する基本的な考え方」2)に従い,当院で実施経験のない外保連試案E難度ならびにD難度の中で診療科長が高難度に該当すると判断する技術とし,当該技術の妥当性・優位性や準備状況に加えて,診療科内のカンファレンス記録や同意書と共に申請することとした.また,他の医療従事者が客観的立場から中止や術式変更勧告が出来る目安となる出血量や手術時間の上限の設定も義務付けている(図2).院内周知については,医療安全研修会で行い,リスクマネージャ―会議でも各診療科の委員に周知徹底している.また,実際に手技が行われる手術室ならびに放射線部の医師を部門の構成メンバーに加え,申請漏れがないように注意している.

図01図02

III.実施と報告
当該技術に実施にあたっては,当院の高難度手術に関する説明同意書を用いて行うこととし,医師以外の医療系職員の同席を必須として,一般的な手技に対する通常の説明内容に加えて,1.当院での過去の実績,2.当該診療行為を提供するにあたっての設備・体制の整備状況,3.術者の専門的資格とこれまでの経緯,についても説明を加え,原則として入院前の外来通院中に同意を得ることとしている.また,定期報告は原則5例までとして,技術施行後,速やかに手術記録を添付した実施時報告を行い,当該技術との関連に関わらず有害事象が発生時には追加報告を行っている.退院時には退院要約も添付した報告も義務付け,病院長による確認の後,次症例に対する実施の可否を判定し申請者に通知するシステムとしている(図1).また,退院後半年時点での報告も行い,5例全例の計3回の報告をもって定期報告は終了とし,それ以降は当該手技に起因する有害事象のみ報告するよう指導している.

図01

IV.申請事例と施行状況
これまで当院の20診療科中11診療科から全32例の申請があり,審査の結果,27件を承認した.本邦での未承認器具を用いた手技についての申請2件と,手術機器の適応外使用に関する申請3件の計5件について,否承認もしくは申請が取り下げられた.承認された申請事例のうち9件の高難度手術について既に5例の定期報告が終了し,5件未満の施行状態のものが10件であった.一方,高難度手術の申請承認後に未施行の事例を8件認めた.これまで計3件の有害事象報告を認めたが,何れも軽微な合併症であった.また,当該医療技術に精通した医師が不在となった場合には改めて申請を行うよう周知しているが,実施術者変更による再申請も1件認めた.

V.おわりに
以上,現在の当院における高難度新規医療技術の導入プロセスと実施状況について報告した.院内周知の徹底と,部門による確認・評価に加えて,実施1例毎に次症例の実施可否を判定することによって,高難度新規医療技術に対する十分な安全管理体制が確保できていた.また,相互ピアレビュー等による他大学との意見交換は極めて有用であり,高難度新規医療技術の導入に関する様々な改良が行われていた.

 
利益相反:なし

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文献
1) 厚生労働省告示第246号:医療法施行規則第9条の23第1項第7号ロの規定に基づき高難度新規医療技術について厚生労働大臣が定める基準,2016.
2) 高難度新規医療技術の導入プロセスにかかる診療ガイドライン等の評価・向上に関する研究班(研究代表者:國土典宏):高難度新規医療技術の導入に当たっての医療安全に関する基本的な考え方,2016.

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