[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (525KB) [全文PDFのみ会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 122(3): 287, 2021

項目選択

Editorial

With コロナ,ニューノーマル時代への突入

東邦大学医学部 外科学講座一般・消化器外科学分野

船橋 公彦



このページのトップへ戻る


 
中国武漢から始まった新型コロナ肺炎は,ヨーロッパ・アメリカを巻き込み瞬く間に世界に広がった.今やアメリカ本土の感染者数は約118万人,死亡者も約25万人にも及び,ベトナム戦争での米兵の死者数約6万人の約4倍をも上回った.全世界では感染者数は約5,700万人,死亡者数は136.5万人で,今もその勢いは留まらず増大の一途を辿っていることを考えると,新型コロナの恐ろしさが改めて見えてくる.私の勤務地である東京では,12月に入って連日新規感染者が500名を超え,第1波,2波を上回る勢いで感染が拡大している.意図もしないところで感染し,取り巻きに広がっていくところが,このコロナの恐ろしさである.低迷した経済の巻き返しを狙ったGo toトラベル,Go toイートであるが,コロナ禍に閉塞感を感じ始めていたわれわれにとっては日常生活を取り戻すための良い機会になると思っていた矢先に小池都知事から再び自粛の呼びかけが報道されて一層閉塞感が増してしまった.数カ月前から休業看板を出していた駅前の行きつけの喫茶店もいつしか閉店の看板に代わってしまい,コロナはボディーブローのように内部からジワジワと社会にダメージを与えつつある.
身の回りをみわたせば,学会をはじめとしたイベントも軒並み対面中止となり,リモート化された.個人的には連日の会議の山がzoom会議となって,かなり時間に余裕ができ,また会議の在り方を見直すいい機会になったと感じている.当初疑問を抱いていたzoom会議だが,いざ利用してみるとこれほど便利なものはない.その一方で,人と直接触れ合う機会を奪われてしまったのは辛い.3密の回避から友人や仲間との食事をしながらの語らいもなくなり,昼食に病院の職員食堂に行けば,教室みたいな机配置になり全員一斉に同じ方向を向いて一人でかつ短時間に済ませなければならず,まるで管理された施設にいるようだ.また,医局員・学生と共に病棟回診も行えず,術前・術後の患者を囲んでのコミュニケーションも取れない.不要不急で医局員の帰宅時間も早くなり少し寂しさを感じるが,医局員の中から子供と久々に一緒に風呂に入れたなどの声もあり,自分自身も最近忘れかけていた家族と過ごす時間の大切さを感じ,また今後の大きな課題である医師の働き方改革を見据えるといい機会とも思えた.この先10年で現在の仕事の半分がロボットや人工知能(AI)に代替されるといわれているが,このコロナ禍で働き方,コミュニケーションの取り方など様々な面でAIの活用にも拍車がかかることに間違いない.これまで常識と考えられていたことが通用しなくなってくるニューノーマルの時代の到来であるが,事の本質を見据えながらこのコロナ危機を逆風ではなく,大きな変革のチャンスと捉えることが必要かもしれない.

 
利益相反:なし

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。