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日外会誌. 122(2): 211-213, 2021

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定期学術集会特別企画記録

第120回日本外科学会定期学術集会

特別企画(5)「地域を守り,地域で生きる外科医たちの思い」 
2.外科統合と法人化のインパクト:地域における若手外科医のリクルートと育成のために

1) 旭川医科大学 外科学講座肝胆膵・移植外科学分野
2) 旭川医科大学 血管外科
3) 旭川医科大学 消化管外科
4) 旭川医科大学 心臓大血管外科
5) 旭川医科大学 小児外科
6) 旭川医科大病院 乳腺センター・呼吸器センター

古川 博之1) , 東 信良2) , 角 泰雄3) , 紙谷 寛之4) , 宮本 和俊5) , 北田 正博6) , 松野 直徒1) , 平田 哲6) , 横尾 英樹1) , 齋藤 幸裕2) , 古屋 敦宏2) , 長谷川 公治3) , 石川 成津矢4) , 今井 浩二1) , 平澤 雅敏5) , 庄中 達也3) , 宮城 久之5) , 内田 大貴2)

(2020年8月14日受付)



キーワード
外科医不足, 外科教育, 外科統合, 地域医療, 医局制度

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I.はじめに
北海道では,全医師数が20年前に比して21%増加している中で,外科医はマイナス39%と著明に減少している1).このままでは北海道の外科が崩壊するという危機感を募らせる中,外科医不足を解消するためには,まず魅力的な外科を創造する必要があると考えた.そのためには,本学の旧第1外科と旧第2外科の壁を取り払うセクショナリズムの廃止と,若手をリクルートするための資金を確保できる透明性の高い組織への変革が必須であった.

II.AMUSEの活動内容
こうして,2015年4月に外科統合をはかり,2016年4月には全国で初めて旭川医科大学外科教育支援機構(以下,AMUSE)として法人化を図った.現在,個人会員144名,法人会員43名の組織となっている.AMUSEの理念は,外科医の人材発掘とエキスパート外科医の養成支援である.その業務を表1に示すが,特に学生・研修医に関する部分を以下に示す.
「1.若手外科医リクルート」では,医局説明会,アドバンス臨床実習説明会,ハンズオンセミナー開催などがそれにあたる.アドバンス臨床実習とは,通常の学生実習の終了後,学生が希望の科を選択できる3カ月間の実習であり,消化器外科では,普段からブタを用いた大動物実験を行っていることもあり,学生に自分たちが実施したい手術手技の手順を提出してもらい,指導医の下,ブタを用いて手術を行い術後管理にも参加してもらっている.自ら積極的に術後状態を見に来る学生も多く,外科医の気持ちになれる大事な体験学習になっている.ハンズオンセミナーの内容は,皮膚縫合,消化管吻合,血管吻合など多岐に及ぶ.腹腔鏡のトレーニングでは,ゲームを行ってタイムトライアルをしたり,胆嚢の模型相手に胆嚢摘出術をさせるなど,外科研修医レベル相当の手技にも挑戦してもらっている.
「2.学会・研修への参加支援」では,外科に興味のある学生の学会参加をうながし,地方会はもちろん,全国学会への旅費・宿泊代・参加費などを援助している.北海道では,2017年より,外科系関連の地方会を統合して,北海道外科関連学会機構(以下,HOPES)とし,年1回9月頃に合同で学会を開催している. HOPESでは,学生セッションという学生が胸部と腹部に分かれ発表してその発表のレベルを競う催しがあり,HOPESの中では最も活気があり,人気の高いセッションとなっている.発表する学生がプレゼンの準備に必死になるのはもちろんだが,スタッフがそれ以上に必死になってプレゼンの指導をすることもしばしばで,その結果,学生の発表とは思えないようなスタッフ顔負けの発表が行われている.
「5.学術交流の活性化」も積極的に行っており,グランド・ラウンズを2カ月に1度開催している.その内容は診療,教育,研究と多岐にわたる.現役で活躍している各分野の外科医はもちろんのこと,海外で活躍する外科医にも講演してもらっている.また,中東などの激戦地に出向いて活躍している国境なき医師団や日本赤十字社に所属する医師の講演では日本で平和に医療を行っているわれわれの豊かさをかみしめる一方で,日本ではなかなかみられない患者の笑顔は印象的であった.アメリカの医学教育についての講演では,まだまだ日本の医学教育のいたらなさを反省した.いずれも学生にとっては心の片隅に残って自分の将来を考える上で参考になる講演ばかりであった.

表01

III.活動の結果
AMUSE発足後4年間の各事業の変遷をみると,グランド・ラウンズの開催数は,最近やや減少傾向にあるが,ハンズオンセミナーは盛んに行われており,のべ参加人数が,1年を通して100名を超えるようになってきている(表2).アドバンスコースは,学生の選択によってきまるが,これも2018年,2019年は,40名前後まで伸びている.また,学生の学会参加支援についても,2018年,2019年とも28名と最多の参加があり,学生発表も増加傾向にある.
図1は,外科統合前(2014年~)からAMUSE発足後までの学生および後期研修医の入会数(AMUSE入会数)をみたものだが,AMUSEができる前は,旧第1外科,旧第2外科を併せてゼロの年もあり,最大でも2名程度であったが,外科統一,AMUSE発足とともに入局者が増加しており,2017年以降では,卒後および後期研修への入会者数は,6名から9名と増加している.

図01表02

IV.おわりに
外科の統一を図ることで様々な行事を全員一丸となって実施し,魅力的な外科を演出できたこと,法人化によって活動に十分な資金を確保でき積極的な活動が行えたことが若手外科医のAMUSEへの入会に繋がったものと考えられた.現在のシステムを維持しながら,若手の育成にも力を入れていく計画である.

 
(第120回日本外科学会定期学術集会 特別企画 「地域を守り,地域で生きる外科医たちの思い」で発表)(2020年8月14日8:00)

 
利益相反:なし

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文献
1) 北海道地域医師連携支援センター:北海道の医師確保対策について http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/cis/ishikakuho/ishikakuhotaisaku-r205.pdf

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