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日外会誌. 122(1): 64, 2021

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手術のtips and pitfalls

「生体肝移植手術のtips and pitfalls」によせて

広島大学 消化器・移植外科学

小林 剛



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肝移植は,救命困難な末期肝疾患を劇的に改善させうる治療法であり,末期肝疾患に対する中心的な治療法として定着しました.わが国の肝移植医療は,欧米諸国と比較して脳死移植が伸び悩む中,生体肝移植を中心に発展し,諸外国をリードする存在です.1989年に第1例目の生体肝移植手術が行われてから30年が経過し,手術手技は成熟期を迎えようとしています.
脳死肝移植と比べ生体肝移植における特徴は,生体ドナーの多大な献身のもとに成り立っていることに加えて,部分肝移植であるが故の困難性が存在します.門脈では一次分枝以遠での再建となり,また肝静脈では複数の細径静脈の再建を余儀なくされることが多く,限られたグラフト機能を最大限に発揮するための工夫がなされてきました.また生体肝移植で培われた手術手技は,広く肝胆膵外科手術に応用され,その発展に寄与してきました.
そこで本項では,わが国の肝移植医療をリードするエキスパートであるお二人の先生に,生体肝移植における門脈再建手技,そして静脈再建手技におけるtips and pitfallsを,イラストを用いてわかりやすく解説していただきました.いずれも肝胆膵癌の局所進行症例においても広く求められる手技であり,次世代を担う肝胆膵外科医にとって修得は不可欠といえます.門脈および肝静脈の再建は,肝血流遮断下に行うことが多く,短時間に確実な結果が求められるため,日常的な備えが必要です.
これから肝胆膵外科を目指す若手のみならず,他領域の手術においても応用可能な手術手技として,会員のみなさまの臨床の一助になれば幸いです.

 
利益相反:なし

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