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日外会誌. 121(6): 697-699, 2020

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定期学術集会特別企画記録

第120回日本外科学会定期学術集会

特別企画(2)「夢を実現し,輝く女性外科医たち―求められるサポート体制と働き方改革―」 
8.大阪大学呼吸器外科における男女共同参画の現状と課題

大阪大学 呼吸器外科

大瀬 尚子 , 南 正人 , 舟木 壮一郎 , 狩野 孝 , 福井 絵里子 , 木村 賢二 , 新谷 康

(2020年8月14日受付)



キーワード
呼吸器外科, 男女共同参画, 大阪大学, 両立支援, キャリアアップ

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I.はじめに:呼吸器外科の現状
日本呼吸器外科学会の会員数は増加の一途をたどっているが,女性会員数も増加傾向にある.2020年3月31日現在の女性会員数は273名と総会員数3,213名の8.5%を占める.若い女性医師の割合が高いため,女性呼吸器外科専門医は76名で,全体1,497名の5.1%にすぎないし,また女性評議員は17名(2.3%)しかいない(図1).それでも2015年には女性評議員が3名しかいなかったことを考えると外科医を続け,キャリアップする女性呼吸器外科医がかなりのペースで増えている.自身も日本呼吸器外科学会の男女共同参画部会の委員を務めさせて頂いているが,周りに女性医師がおらず,呼吸器外科を目指すことを躊躇する学生や研修医も多くいることを目の当たりにしてきた.

図01

II.大阪大学呼吸器外科における現状と特徴
医局について:一方で当科は全国的にも医局員における女性医師の数が多い.当科は戦後まもなくに女性の先生がお一人おられた以降は,全て男性医師で構成されていた.2002年に自身が入局後,少しずつ女性医師が増え,近年はほぼ毎年女性医師の入局がある.この17年で13名の女性医師が入局し,今年も新たに女性の希望者がいる.退局したのは家庭の都合で転居した1名のみだが,転居先で呼吸器外科医を継続しているので,全員がキャリアを継続している.現在の大学・関連施設の全医局員数は85名であり,14.1%を占める.今年は外科学会指導医1名,呼吸器外科専門医5名,外科専門医も9名(重複含む)となった.
当科の特徴は,教授を筆頭に性別に関する垣根が低い.2002年頃でいうと,他の外科系科では女性医師の入局が断られることも多かったが,当時の大阪大学第一外科(心臓血管外科,消化器外科,呼吸器外科の合同)は当時からウェルカムであった.実際には,仕事はかなりハードであったので女性の希望者が少ない科であったが,やる気があれば性別に関係なく門戸が開かれていた.特に呼吸器外科は「女性医師が継続できない職場に未来はない」と初代の奥村明之進教授が公言されており,現在も同様に引き継がれている.
大阪大学呼吸器外科において:そのため当科の特徴として,性別関係なく対等に仕事も休暇も機会が与えられる.男性医師も育児休暇を取得し,子供の学校行事や看護による年休の取得も自由である.共働きの男性医師も多く,育児休暇も短いながら3名が取得した(6カ月,1週間,1カ月).女性医師も男性と変わらぬ業務をこなしており,手術も手術時間や難易度に関わらず,平等に機会が与えられる.当直,オンコールも現在は減免を希望する医師がいないこともあるが,全員が同じ責務を負っている.
また医局に2017年に男女共同参画に関するメール相談窓口を創設した.相談希望があれば申し出てもらい,いつでも希望する医師に相談できる体制を構築した.現在のところ利用はないので,各々の施設で,個人的に上司に相談することで理解が得らえていると考えている.
また自身が大学勤務となったことから,2年に1回医局員に対しアンケート形式の意識調査を行っており,その結果を学会発表(2018年日本外科学会,2019年日本呼吸器外科学会)で発表しフィードバックしている.

III.今までの経験
自身は2人の出産を経験している.ともに関連病院への出向中であったが,医局内でも初めての経験となった.第1子の際は同僚医師も多かったので,産休・育休中は院内サポートしていただいた.第2子は,手術日に応援医師の確保が必要であり,大学や他病院から手術日に応援体制をしいていただいた.またカンファレンスの時間を午前中へ変更したり,当直の免除など配慮していただいた.自身も長期の休暇ではモチベーションと技術が低下し復帰が困難となると感じたこと,同僚医師への負担を極力減らしたかったこと,保育園の入園のしやすさから0歳児で復帰した.育児短時間勤務も第2子の際は6カ月行ったが,その際もできるだけ手術に携われるようにという上司の配慮で,午前中のみ助手として手術に参加させて頂いた.現在も学校行事や病気の際の看護休暇も快く取得させてもらえる.逆に他の男性医師が急遽帰宅しないといけない時は快く代理を務める.また,働いているからといって免除にはならない,保護者会やPTAの役員も経験してきたが,他の業種の保護者の方々との交流も非常に勉強になった.育児と仕事の両立が大変なのはどの業種でも一緒で,医師に限った話ではないということがよくわかった.本当に恵まれた環境で今に至っており,お世話になった方々にこの場を借りて感謝申し上げます.

IV.おわりに
今後の課題として,性別に関係なくライフイベントの際は対応できるように,職場の環境を整えていきたい.女性医師が輝ける職場は,男性医師にとっても魅力的であらねばならないと考えている.当科のアンケートでも若い男性医師も共働き世帯が多いこと,男性医師も育児休暇取得の希望が多いことがわかった.現在は各々の希望に添うことができていると考えているが,当科も若手医師が増えてきている.医局としてもライフイベントが複数の医師,複数の関連病院に重複した場合の応援体制について検討が必要であると考えている.また,要望はそれぞれ異なるので,キャリア継続が可能となるように個々に対応する必要があると考えており,常に対話できるような体制を維持し発展していきたい.

 
利益相反:なし

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