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日外会誌. 121(5): 542, 2020

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手術のtips and pitfalls

「エネルギーデバイスを用いた乳がん手術」によせて

杏林大学 乳腺外科

麻賀 創太



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かつて,乳がんの手術ではリンパ節転移の有無にかかわらず腋窩リンパ節郭清が行われていた.1993年にKragらがRIを用いた乳がんに対するセンチネルリンパ節生検を開発し,その後の臨床試験の成果から,臨床的にリンパ節転移陰性の症例では,まずはセンチネルリンパ節生検を行い,転移があった症例に対してのみ腋窩リンパ節郭清を行うのが標準治療となった.さらに近年では,センチネルリンパ節転移陽性であっても,一定の条件に該当する症例では腋窩リンパ節郭清が省略されるようになってきた.このため,特に若い乳腺外科医は腋窩リンパ節郭清術を経験する機会が減ってきている.
腋窩リンパ節郭清術に伴う合併症として,患肢のリンパ浮腫に加えて,神経障害性疼痛やリンパ漏が挙げられる.神経障害性疼痛は,神経の切断だけでなく,電気メス等による刺激や術中の神経のけん引などでも発生する.また,リンパ漏は,微小なリンパ管の不十分なシーリングによって発生する.これらの合併症は特に視野の悪い手術で発生しやすいことから,乳房部分切除時の腋窩リンパ節郭清,あるいは乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘術時の腋窩リンパ節郭清に限定して,エネルギーデバイスの使用加算が保険上認められるようになった.
今後,乳がん手術でエネルギーデバイスが使用される機会は増えるものと思われるが,機器が高価であることから,その有用性が最大限発揮されるような使用方法が求められる.また,使用法を誤ると思わぬ血管,神経損傷を引き起こすこともある.そこで,今回は「エネルギーデバイスを用いた乳がん手術」と題して,経験豊富なお二人の先生に,腋窩リンパ節郭清術におけるエネルギーデバイスの有効な使用方法や使用上の注意点について,図を用いて解説頂いた.本企画が,今後,乳がん手術にエネルギーデバイスの導入をお考えの先生方のお役に立てば幸いである.

 
利益相反:なし

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