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日外会誌. 121(5): 534, 2020

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会員のための企画

「がんの近赤外光線免疫療法の開発経緯と今後の展望―外科治療との関わりも含めて―」によせて

順天堂大学医学部 下部消化管外科

杉本 起一



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これまで,がんに対する治療は,手術,化学療法,放射線療法の3大治療が主体であり,がんを物理的に除去する,あるいは傷害するという方法で治療が行われてきた.しかし,治療に伴い,少なからず正常な細胞や組織,器官にダメージを与えてしまうことが問題であり,その克服が既存のがん治療における課題である.
また,近年,第4の治療として免疫を用いた治療の開発が活発に進められている.がんは,多彩な免疫逃避機構を構築し,無限に増殖可能となる.その免疫逃避機構を排除することによって抗腫瘍免疫効果を利用しているのが,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗CTLA-4抗体であり,その「新しい治療方法の発見」に対して,2018年ノーベル生理学・医学賞が授与された.また,その他にも分子生物学やがんゲノム解析の発展をもとにした免疫学の新しい知見により,今後も新たな免疫療法の治験や臨床試験が行われていくものと予想される.
今号の「会員のための企画」では,現在,本邦および米国で臨床試験が進められている「近赤外光線免疫療法」を開発し,様々な臨床応用を研究されている,米国国立がん研究所(NCI),米国国立衛生研究所(NIH)主任研究員の小林久隆先生に執筆を依頼した.がん細胞を選択的に標的とすることによって正常な細胞・組織を傷つけることなく,がん細胞・組織を死滅させうる,全く新しい概念の治療方法である.また,破壊されたがん細胞から流れ出た腫瘍抗原により腫瘍免疫を増強し,治療効果を長続きさせることも可能となる.小林先生には,本治療方法が外科治療にどのように関わることが出来るのかも含めて執筆いただいた.今後,本治療ががん治療においてどのように活用されていくのか,目が離せないところである.本企画が,会員の皆さまの理解の一助になれば幸いである.

 
利益相反:なし

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