日外会誌. 121(4): 460, 2020
手術のtips and pitfalls
「再発例から学ぶ小型肺癌に対する積極的縮小手術(肺区域切除術)のtips and pitfalls」によせて
AOI国際病院 呼吸器外科 秦 美暢 |
肺癌に対する手術は,1933年Graham1)による左全摘術の成功に始まり,1960年にCahan2)が肺葉切除とリンパ節郭清を報告し,以来,肺葉切除とリンパ節郭清が標準術式として実施されてきました.1980年代にLung Cancer Study Group3)により肺葉切除と縮小手術の比較試験が実施されましたが,肺葉切除群が有意に予後良好であり縮小手術群では局所再発が3倍という結果でした.その後,高分解能CTなど画像診断の進歩や,適応症例の厳選,手術手技の改良等により,小型肺癌に対する縮小手術が改めて着目されるようになりました.2009年には小型肺癌に対する積極的縮小手術としての系統的リンパ節郭清を伴う肺区域切除術について,臨床試験が開始されています(JCOG0802/WJOG4607L).
現時点での実臨床における標準術式は肺葉切除とリンパ節郭清ですが,すでに臨床試験の結果を待たずに積極的縮小手術を導入している施設も見受けられます.最近では縮小手術術後遠隔期の再発や再発後の再手術に関する報告もみられるようになってきました.呼吸器外科における再手術に際しては,一度血管鞘を剥離し強固な癒着を生じた肺動脈の処理が困難であるため,出血に対する危険性に備えて肺門部へのアプローチ方法や開胸法の選択について十分な準備と検討が必要となります.縮小手術術後であっても肺門処理後の再手術のリスクは肺葉切除術後と同等であります.今回,積極的縮小手術である肺区域切除術後の再発例およびその残肺葉切除例から,残肺葉切除例における肺門部へのアプローチ法,肺動静脈や気管支の処理等の注意点について,獨協医科大学の千田雅之先生に解説をお願いし,さらには今後適応とすべき積極的縮小手術例の選択や手術操作の要点について,兵庫県立がんセンターの西尾渉先生に詳述して頂きました.今回の企画が会員の皆様の診療の一助になれば幸甚です.
利益相反:なし
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。