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日外会誌. 121(4): 405-406, 2020

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理想の男女共同参画を目指して

変革せよ!さもなくば死ね!(Change, or Die!)ダイバーシティ,やるっきゃない(Diversity, Just Do It! It’s Now!)

特定非営利活動法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会理事長 

松本 晃

内容要旨
外科の世界の女性の活躍は“遅々として進んでいる”.女性活躍の為に環境と制度を整備し,働き方だけでなくむしろ生き方の変革を始める時がきているのではなかろうか.

キーワード
Diversity Journey, 抵抗勢力と既得権, 働き方改革?, 生き方改革!, Change, or Die!

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I.はじめに
「アキラ,数えたことはないけれど,日本人の半分は女性ではないのか.その半分もいる女性をお前は何故使わないのか!」.
そんな一言から私の“Diversity Journey”は始まった.2001年のことだった.当時のジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社での私のボス,ビル・ディアスタインがあるグローバルの会議で私へ投げかけた痛烈な皮肉であり警告だった.
私はアタマはあまり良くない.70年の学生紛争の頃,私は速くない体育会水泳部員,敗けてばかりの競馬,そしてかなり強い麻雀とバイトとだらしない毎日の明け暮れだった.にも拘わらず間違って修士課程に進み,大恥をかきながら大学院生活を送り,這う這うの体でそこを逃げだし,なんとか民間会社に潜り込んだ.以来,社会人としてソコソコ成功したのは頭が良かった為でなく,アタマが柔らかかったからだと信じている.どんな新しいことに対しても,頭から否定しない.「何,それは?でも面白そうじゃない.やってみれば・・・」というスタイルで生きてきた.言い換えれば,実にいい加減な人間とも言える.

II.私のDiversity Journey
さて,その時も「言われてみれば,その通り.じゃ,ダイバーシティとやらをともかくやってみるか」で始まった.一方,やり始めたら“ムキになって,力づく”が信条.2008年3月,ジョンソン・エンド・ジョンソンの社長退任時には女性幹部の数は30%を遙かに越えていた.また,その間の業績は世界からも注目されるほどの好業績だった.
1年後の2009年6月,カルビーの会長兼CEOに就任した.そこでも,私のダイバーシティは“やめられない,とまらない”.日本が活用していない最大の資源は女性だ.この資源を活用しない限り,会社も広くは日本も今の閉塞感から抜け出せる筈がない.
ともかく,実行した.
勿論,抵抗勢力は強い.何故抵抗するかと言えば,ダイバーシティは抵抗勢力がもっている既得権を奪うからだ.それではその既得権とは何か・・・.既得権とは一般的には,金,そして権力・権限・最後に地位・身分のことだ.こんな良いモノを持ったら手放す筈はない.なにがなんでも死守する.当たり前のことだ.
さて,ダイバーシティは医療の世界においても,今や避けて通れない.医師,ましてや外科の世界は「日本人・男・シニア」だけでやってきた.しかし,今やそれではやっていけなくなっているにも拘わらず一向に変らない.これでは女性外科医は増えない.また,若い医師は外科を選択しない.一方外科を選択しないもう一つの大問題は「働き方」がほとんど変らないことだ.

III.医師の働き方改革
「24時間戦えますか」.あの高度成長の時代の有名なドリンク剤のテレビコマーシャルだ.一般のサラリーマンですら当時は24時間戦っていたのだが,更に典型的な職業は医療従事者だったし,その極みは外科医だった.
しかし,その「24時間・・・」は一昔前のものの筈だが,未だにそれを続けているのが外科医の世界ではなかろうか.それでは女性外科医が増える筈もないし,若手医師から敬遠されるのは仕方ない.
安倍首相は2度目の総理大臣に就任して早々,女性活躍を訴えた.そして,5年後「働き方改革」に手をつけた.結果は長時間労働の是正だけの改革に終わり,医療においては診療報酬の是正にほとんど手をつけることなく“残業手当を払え!”だけの改革に終わりそうだ.これではダイバーシティ,特に女性外科医の問題が画期的に解決されることはない.

IV.本当にやらないといけないこと―生き方改革
さて,私の主張は「生き方改革」だ.
人生80年とは言うものの,かつて人生は70年で全ては設計されていた.最初の20年余は勉強だけ.そして次の40年はただがむしゃらに働くだけ.そうすれば残りの10年ほどは楽しい(?)余生を迎えられる.しかし,人生が80年どころか下手をすると100年になりかねないとなると,今までの20年学業,40年働くだけ,残りは余生を楽しむなんていうことにはならない.これからの人生100年時代,最初の20年余は学業が中心だが勉強は一生続けましょう.次の40年働いて40年お国が面倒みるなんてことは出来ない.だからなるべく長く,働ける限り働いてください.しかし,働きづめなんて無理なので学びもする,そして余暇も楽しむ生活に変えてください,ということだ.要するにやらないといけないのは「働き方改革」でなく「生き方」を「改革」しなければ人生100年はただ長いだけの人生になってしまう.働くことはあくまでも「生きる」の一部だ.多様な人が多様な働き方,生き方に変えなければ特に女性活用などありえない.

V.おわりに
働く環境を整え,制度を整備して初めてダイバーシティは進む.世界から大きく遅れをとってしまったわが国のダイバーシティはここらあたりで方向転換しないと外科の世界もその内に本当に「日本から外科医がいなくなる日」が来るかも知れない.日本人・男・シニア・一流大学卒,そんな人達だけでやってきた日本.それが今や閉塞感に繋がって全てうまくいかなくなってしまった.
Change, or Die!(変革せよ,さもなくば死んでしまえ),ダイバーシティ,“Just Do It!”やるっきゃない,ですヨ‼

 
利益相反:なし

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