[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (547KB) [全文PDFのみ会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 121(4): 398-399, 2020

項目選択

会員へのメッセージ

皆で考えたい,日本外科学会の未来

日本外科学会理事長,九州大学大学院 消化器・総合外科 

森 正樹



このページのトップへ戻る


 
2020年度は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大で始まりました.ようやく収束の気配が見えつつありますが,まだまだ気が抜けない状況です.
さて,私は先般の理事会で理事長として再任頂きました.先の2年余の任期中における会員の皆様のご支援に心より感謝申し上げます.コロナ禍で緊急事態の中ですが,これからの2年間の抱負を述べたいと思います.
現在,日本外科学会の会員数は4万名を超えていますが,若手外科医が増えていないことが問題となっています.また,専門医の研修プログラムや働き方改革など早急な対応を要する課題もあります.他方で,新型コロナウイルス感染症は社会生活のあり様にも大きな影響を及ぼし,これを契機にあらゆる面で変革が起こることが予想されます.これらの点を踏まえ,以下の点を重点項目とし,今後の日本外科学会の発展に向けて皆様と情報を共有したいと思います.
1.若手外科医の増加策
外科専攻医採用者数は,専攻医募集定員の4割弱しか充足されていません.本学会とわが国の外科医療の発展のためには,若手外科医の増加が最も重要です.本学会が行った労働環境に関するアンケート調査では,労働時間,給与,医療訴訟の危険などが懸念として挙げられています.働き方改革により勤務時間の削減が見込まれますが,インセンティブの導入によって労働時間と精神的負担に見合った対価を確保し,無過失補償制度の確立によって訴訟リスクの低減を目指します.これらによって,医学生からみて働きがいのある外科を作りたいと思います.
2.専門医プログラムの早期確立
新専門医制度が開始されましたが,いまだにサブスペシャルティ領域の枠組みや連動研修の方法など,未確定な部分があります.日本専門医機構と連携しながら,若い外科医が安心してスムーズに研修できるよう,早期の制度確立を行います.
3.外科医の働き方改革
医師の働き方改革が議論され,2024年からは新しい仕組みの中で働くことが求められます.問題は病院規模を考慮した議論が成されていない事です.特に大学については研究と教育もあるため,これらも含めた議論が成され,外科医が希望を持てるように交渉します.
4.国際化の推進
さらなる国際化を目指し,欧米はもとより,アジアの国々やアフリカ諸国との連携を行っています.特にAssociation for Surgeons of India(ASI)や College of Surgeons of East, Central and Southern Africa(COSECSA)と交流を図っています.また,機関誌Surgery Todayの発展は国際化の観点からも最重要ですので,その発展に全力を尽くします.
5.女性外科医の活躍
外科における女性医師の役割はますます大事になっています.今年度,女性の理事が2名誕生しましたが,女性外科医がますますその力を発揮できるような体制を考えます.
6.学術集会の在り方
新型コロナウイルス感染の拡大により,本学会学術集会も延期を余儀なくされました.これは学術集会の在り方を見直すよい機会と思います.学会や国レベルの各種委員会はテレカンファレンスでスムーズに開催できるようになっており,学術集会自体にもその普及が期待されます.他方で,学会が多い事が特に若い外科医の負担になっているとの問題提起も成されています.今後,日本外科学会と関連する学会間で学術集会の在り方を共同で討議し,今後の方針を示したいと思います.
以上のほかにも,解決しなければならない問題が山積しています.会員の英知を結集して,世界に冠たる日本外科学会になるように,引き続いてのご指導とご支援をいただければ幸いです.どうぞよろしくお願い申し上げます.

 
利益相反:なし

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。