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日外会誌. 121(2): 157, 2020

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特集

臓器移植の現状と展望

1.特集によせて

藤田医科大学 医学部呼吸器外科学

星川 康



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1997年に臓器移植法が施行され脳死下の心,肺,肝,腎,膵,小腸などの提供が可能になり早23年が経過した.2019年末現在の死体移植件数は心515,肺528,肝592,腎4,289,膵410,小腸19となった.本邦の各臓器移植後成績は国際登録データに比し,いずれも勝るとも劣らない.
一方で,ドナー特異的抗体関連型拒絶反応,深刻な感染症など新たな併発症が経験されるようになり,また当初から問題であった提供臓器数の不足は相変わらず深刻である.2010年に改正臓器移植法が施行され,15歳以上に限られていた提供が全ての年齢で可能になり,家族承諾による提供が可能となった.改正法施行前は5例/年であった提供数が施行後は54例/年に著増した.その後,日本移植学会,臓器移植関連学会協議会,日本臓器移植ネットワークを中心とした啓発活動,脳死下臓器提供の体制整備に関わる様々なアクションにより提供数は増え続け2018年は97例となった.しかし,世界と比較し人口あたりの提供数は著明に少なく,待機患者数は増加をつづけており,待機中死亡は依然として多い.
そのような中,救急・脳外科診療の現場に臓器提供について積極的な機運が生まれてきた.臓器提供する権利を守るという観点から一歩踏み出し,終末期医療をやりつくし脳死患者のご家族のお気持ちに寄り添うために,臓器提供を選択肢として提示するという考え方が徐々にひろがりをみせ,そのためにどう体制を構築するかという議論が展開されている.
本特集では,各臓器移植の第一人者の先生にそれぞれの臓器移植の現状と課題について,そして救急医のお立場から脳死下多臓器提供の現状と新たな取り組みについてご執筆いただいた.さらに,学術的な内容を加味し,より多くの会員の興味を喚起することを目的に,移植免疫と免疫寛容研究の現状と将来展望をご紹介いただいた.ぜひ多くの会員にお読みいただきたい.

 
利益相反:なし

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