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日外会誌. 121(1): 138-140, 2020

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卒後教育セミナー記録

日本外科学会第95回卒後教育セミナー(平成31年度春季)

魅力的な外科医師育成プログラムを目指して!
 3.高度技術をシステマティックに学ぶには?―形成外科医の立場から―

一般社団法人乳房再建研究所 

武石 明精

(2019年4月20日受付)



キーワード
マイクロサージャリー, 穿通枝皮弁, 乳房再建, 足趾移植

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I.はじめに
形成外科領域で最も高度な技術を必要とする手術は,マイクロサージャリーを用いた組織移植による再建手術である.以前は1mm程度の血管吻合が限界であったものが,顕微鏡や手術器具の発達に伴い1mm以下の血管吻合や剥離を必要とする穿通枝皮弁や,0.5mm程度のリンパ管吻合を必要とするリンパ管―静脈吻合によるリンパ浮腫の治療1)が一般的になっている.なかでも最も高度な技術を必要とする再建手術は,機能再建を伴う足趾移植(図1)と整容再建を伴う穿通枝皮弁による乳房再建2)図2)である.

図01図02

II.再建外科医の育成
形成外科医として高度な技術を必要とする手術を習得するには,高度手技を獲得するための臨床医としての基礎トレーニングと実際の手術チームの一員として各役割を段階的に経験する臨床トレーニングを並行して行う.
再建手術では,裸眼で行う直視下操作,ルーペ下操作と顕微鏡下操作が必要である.直視下,ルーペ下,顕微鏡下と徐々に高度な手技を段階的に習得させるのではなく,ルーペ下操作と顕微鏡下操作は直視下操作の延長線上にあるという概念のもと,すべての操作を並行して指導する.顕微鏡下手技は,トレーニング用の顕微鏡を用いて微小血管吻合用のトレーニングチューブ等で血管吻合の訓練を行う.ルーペ下操作は,形成外科の一般手術時にルーペを装着させ,ルーペ下の視野に慣れると同時に,微小血管や神経の観察を指導する.特に微小血管から出血した際の双極止血器による止血操作では,出血している血管の管腔を観察しピンポイントで焼灼するように指導することで,微小血管への意識を高める.
臨床トレーニングでは,実際の手術チームの一員として各ポジションを段階的に経験することで,最終的に手術に必要なすべての手技を獲得できる指導を行う.乳房再建も足趾移植も,移植床を作成するレシピエントチームと皮弁を採取し実際に移植を行うドナーチームがある.基礎トレーニングを終えた術者は,まずレシピエントチームの助手として移植床作成とレシピエント血管の準備操作を学ぶ.次にレシピエントチームの術者として指導医のもとに移植床を作成する.次にドナーチームの助手として皮弁採取,血管吻合,移植手技を学び,最終的に指導医のもとでドナーチームの術者として移植を行う.ドナーチームの術者を経験することで移植床作成の状態がいかに再建手術の血管に影響があるかを学び,再びレシピエントチームの術者に戻ることでレシピエントチームの指導者としての技術を確立させる.その後ドナーチームの術者として経験を積むことで,再建外科医としての技術を確立する.

III.おわりに
臨床トレーニングでは,各段階でうまくいかなかった手技を確実に習得させることも重要であるが,滞りなく行えた手技の再現性があるかを確認し,再現性の重要性を理解させることも重要な要素であると考える.また,一つ一つの手技を確実に習得させるためには,術者の手の動きや器具の動かし方をマニュアル化して,無駄な動きをなくすように指導することも再現性の高い手技を獲得させるために重要であると考える.

 
利益相反:なし

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文献
1) Takeishi M, Kojima M, Mori K, et al.: Primary intrapelvic lymphaticovenular anastomosis following lymph node dissection. Ann Plast Surg, 57: 300-304, 2006.
2) Takeishi M, Fujimoto M, Ishida K, et al.: Muscle sparing-2 transverse rectus abdominis musculocutaneous flap for breast reconstruction:a comparison with deep inferior epigastric perforator flap. Microsurg, 28: 650-655, 2008.

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