[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (868KB) [会員限定]

日外会誌. 126(4): 359-364, 2025


特集

移行期医療を考える.現場からの提言

7.小児がん経験者の長期フォローアップと移行期医療

兵庫医科大学 小児外科

大植 孝治

内容要旨
小児がんの治療後も長期にわたり,腫瘍そのものによる影響や,手術,化学療法・放射線治療などの影響により晩期合併症(late effect)と呼ばれる慢性健康障害が発生し,その割合は加齢とともに増加する.小児がんの治療成績向上とともに,成人期に達する小児がん患者が増加し,これらの患者の長期フォローアップと成人医療への移行の重要性が認識されるようになってきた.日本小児血液・がん学会の長期フォローアップ委員会などによる啓蒙活動やセミナー,講演会などの活動により,小児腫瘍専門医の晩期障害への認識が高まり,小児がん拠点病院などの専門施設では長期フォローアップや成人移行への取り組みがなされるようになってきたが,小児がんの晩期障害に対する知識・経験豊富な成人診療科医師が不足していることもあり成人医療への移行に関してはスムーズに行われているとは言い難いのが現状である.小児科の医師や小児医療関係者だけで小児がん罹患した患者を一生見ていくことは困難であることを理解し,小児がんの晩期障害をともに見ていただくことができる成人診療科の医師を増やすことが,成人期の医療に移行するために必須である.また患者にも治療後も様々なイベントが長期にわたって起こる可能性があることを理解していただくとともに,年齢相応のヘルスリテラシー(自分で健康管理ができる能力)を獲得するように支援する必要がある.

キーワード
小児がん経験者, 晩期合併症, 長期フォローアップ, 成人移行, 移行期医療


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。