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日外会誌. 126(4): 326-333, 2025


特集

移行期医療を考える.現場からの提言

2.肝胆道系疾患の移行期医療・成人移行支援

宮城県立こども病院 外科

佐々木 英之

内容要旨
近年,小児領域の治療成績向上により,生存率が上昇し,成人期まで医療支援が必要な患者が増加している.これに伴い,小児期発症の慢性疾患を持つ患者の移行期医療ならびに成人移行支援の体制整備が求められている.特に希少難治性疾患の移行には,医療・福祉の両面から支援が必要とされている.
胆道閉鎖症では,葛西手術や肝移植の進歩により生存率が向上したが,成人期における黄疸再発や胆管炎などの続発症が課題となっている.成人移行支援を進めるなかで,小児外科が診療の調整役を担いつつ,各領域の成人診療科と連携する体制での診療が行われている.
移行期医療の推進には,自立支援,チーム医療,成人期管理の標準化が鍵となる.小児期からの自立支援を促し,患者の自己決定権を尊重することが求められる.宮城県立こども病院では「みやちるノート」などのツールを活用し,患者の疾患理解と自己管理能力の向上を図っている.
科学的根拠が希薄なことが多い希少疾患では,診療の標準化が困難であることが多いが,関連学会や政策研究班が疾患別の成人期医療のガイドとなるような文書・資料の整備が進められており,疾患別の診療ガイドラインの整備や,小児医療側と成人医療側との情報共有が進められている.成人医療側の認識向上も重要であり,日本消化器病学会内に「成人移行あり方研究会」が設立されるなど,取り組みが進められている.今後も移行期医療の重要性が広く認識されるなかでの,体制整備が求められる.

キーワード
移行期医療, 成人移行支援, 肝胆道疾患, 胆道閉鎖症


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