[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (2059KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 125(5): 435-442, 2024


特集

乳癌治療における手術の省略について考える

8.腋窩リンパ節郭清省略におけるTargeted Axillary Dissectionの現状

がん研究会有明病院乳腺センター 乳腺外科

坂井 威彦

内容要旨
リンパ節転移陽性患者に対して,術前化学療法後の腋窩の低侵襲手術として,Targeted axillary dissection(TAD)が近年注目されている.術前化学療法前に,転移が証明されたリンパ節に印(マーカー)を留置して,治療効果が良好な患者に対して,センチネルリンパ節生検に加えてマーカーを留置したリンパ節を摘出することで,腋窩リンパ節郭清を省略できる群を選択する検査としての手技である.初期治療開始前のステージング,標的リンパ節へのマーキング,追跡,画像評価,そして標的リンパ節を確実に取るための位置決めといった,五つの工程を行うことで,より精度の高い患者選択が可能となる.このマーカーには放射性同位元素や磁気を用いたマーカーや,乳房に用いるクリップ,墨汁など,世界で様々な方法が用いられている.TADは各種ガイドラインでも推奨治療とされ,広く世界中で行われてきているが,上記マーカーが保険収載されていない点など日本ではまだ十分に普及しているとは言えない.画像診断機器が広く普及している日本の実臨床に適した,腋窩の低侵襲手術が提唱されるには,社会基盤の整備を含めてもう少しデータの蓄積が必要である.

キーワード
腋窩の低侵襲手術, Targeted axillary dissection, TAD, マーカー, センチネルリンパ節生検

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。