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日外会誌. 125(3): 244-250, 2024


特集

Acute Care Surgeon―その活躍の場―

8.わが国のAcute Care Surgeryの将来像

日本Acute Care Surgery学会理事長,国立病院機構災害医療センター院長 

大友 康裕

内容要旨
外傷外科には,外科医として高い専門性が求められる.米国では “Trauma is a surgical disease”として,米国外科学会が中心となって外傷診療体制整備,外傷外科学を発展させてきている.一方,わが国では,歴史的に外傷診療は専ら日本救急医学会が担ってきた.その結果,「外傷を扱う外科医」が拠り所とする学会がない状況となっていた.そのような状況から日本Acute Care Surgery学会を設立させた.同学会では一定の指針に基づき修練を積んだAcute Care Surgeonを「Acute Care Surgery認定外科医」として認定している.外傷や救急外科症例の治療成績の改善が期待されるとともに,近年Acute Care Surgery部門が,外科医の働き方改革や病院の管理運営・収益改善に貢献する事が認識されつつある.外科医の数が増えない状況下で,外科診療の専門細分化が進み,各外科医が狭い領域のみをカバーするようになった結果,外科医不足という弊害が,全国各地の外科診療施設からの声としてあげられるようになっており,その傾向は年々増加している.こういった危機意識の広まりが,外科ジェネラリストとしてのAcute Care Surgeonが期待されている理由である.
今後,有能なAcute Care Surgeonを数多く輩出し,医療機関におけるACS部門の設置を進めていくことは,わが国における外傷外科,救急外科診療レベルの向上のみならず,外科医全体の労務環境改善や医師不足地域への必要な外科診療の提供につながり,その結果,国民の生命を守ることに貢献できると考える.

キーワード
外傷外科Trauma Surgery, 日本Acute Care Surgery学会, Acute Care Surgery認定外科医, 外科医不足, 働き方改革

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