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日外会誌. 125(2): 113-119, 2024


特集

外科におけるRCT―top journalへの道―

3.心臓血管外科におけるRCT―top journalへの道―

神戸赤十字病院・兵庫県災害医療センター 心臓血管外科

築部 卓郎

内容要旨
心臓血管外科領域の臨床研究においてランダム化比較試験(RCT)が少ないことは認めざるを得ない.これは研究のデザイン,実施方法,解析方法それぞれに心臓血管外科領域特有の課題が存在するためである.具体的には,リスク・ベネフィットのバランスを取るのが困難,手術手技の急速な進化,助成獲得が困難,外科医に対する臨床疫学教育の不足,複雑なインターベンション,外科医の専門技術や手術経験数(学習曲線)の影響,盲検化が困難,等があげられる.特に手術および手術手技のRCTは少なく,新規手術手技の有用性に関する研究は最も無作為化が難しい領域である.こういった臨床研究のメインは大規模の後方視的研究でいいのではないかというexpert医師の意見も多い.
一方で,トップジャーナルへのアクセプトには良質のRCTが必須であり,その採択基準はさらに高まっている.本邦では心臓血管外科領域のRCTが必ずしも活発であるとは言えないが,海外施設からトップジャーナルに掲載されているRCTの中には,単施設,single blind, 研究助成なしの研究は存在し,さらに大規模な多施設共同での術式の比較研究においてもexpertise-based randomization を用いた研究や,対象を絞った明快かつ限局的利用が可能なキレの良いエビデンスを作ることも可能であった.さらにRCTをビッグデータの中に組み込んでいくことで,より大規模で患者を中心とした治療選択への応用が期待される.

キーワード
ランダム化比較試験, 心臓血管外科, トップジャーナル

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