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日外会誌. 124(5): 410-415, 2023


特集

外科医によるこれからの癌薬物療法―最新知識と安全で効果的な遂行のコツ―

5.胆道・膵癌における薬物療法

山形大学医学部 外科学第一講座

元井 冬彦 , 菅原 秀一郎

内容要旨
胆道癌と膵癌はいずれも難治性悪性腫瘍であり,その治療成績は不良である.予後不良の共通する特徴として,①早期診断が困難, ②化学療法や放射線に低感受性, ③術後再発が高頻度, が挙げられる.いずれにおいても根治切除が治癒・長期生存の鍵を握るが,手術のみでの成績向上は困難である.一方で近年の化学療法の進歩や分子生物学的知見の蓄積,また治療戦略の転換により予後改善の兆しがある.化学療法に低感受性である両癌腫であるが,薬剤の開発とともに,手術と組み合わせた補助療法の進歩が治療成績向上に大きく貢献している.胆道癌では切除不能癌に対する標準レジメンが確立し,術後補助療法の有効性も証明された.分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が日常診療に組み込まれており,今後もゲノム情報に基づく新規薬剤・併用療法が登場してくることが予想される.膵癌では,切除不能癌に対する多剤併用レジメンが標準治療として汎用される中,術前補助療法のエビデンスが示され,術後補助療法と合わせて周術期化学療法が広く普及しつつある.また治療奏効後のConversion手術も包含した集学的治療の中に外科が位置付けられる様な,治療戦略が確立して行くものと予想される.癌腫により異なる道筋ではあるが,難治癌克服に向けた進展が今後も期待されている.

キーワード
膵癌, 胆道癌, 術前化学療法, 術後補助療法, Conversion手術

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