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日外会誌. 124(2): 183-189, 2023


特集

糖代謝異常と外科医療

7.糖尿病患者に対する代謝改善手術

北里大学医学部 下部消化管外科学

内藤 剛

内容要旨
重症肥満症に対する減量手術は,摂食量を制限することにより体重減少を目的とした手術である.この手術は2型糖尿病に対しては体重減少によらない直接的な改善効果があることが明らかとなり減量・代謝改善手術と呼ばれるようになった.主な術式は胃の縮小で摂食量を制限する摂食制限手術と,これに消化管バイパス術などの吸収抑制手術を付加する手術に大別される.わが国では摂食制限手術である,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術のみが保険収載されており,吸収抑制付加手術は腹腔鏡下スリーブバイパス術が先進医療Aとして限られた施設で実施されている.減量・代謝改善手術の糖尿病改善効果は薬物療法から完全に離脱して血糖が正常化する臨床的寛解をもたらす例も多く,内科的な治療に比して著しい効果が長期間認められることが示されている.その効果は吸収抑制付加手術においてより高い効果が認められる.糖尿病改善効果の発現にはインクレチンや胆汁酸,腸内細菌の関与などさまざまな機序が提唱されている.2021年には日本肥満症治療学会,日本糖尿病学会,日本肥満学会の3学会合同委員会から,日本人の肥満2型糖尿病患者に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメントが発出され,その実施基準や術式選択,さらには周術期管理に関する推奨がなされている.今後本手術の安全な普及に寄与することを期待したい.

キーワード
糖尿病, 減量・代謝改善手術, 代謝改善効果, 肥満症, 安全性

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