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日外会誌. 124(1): 18-24, 2023


特集

独自の進歩を見せる日本の甲状腺癌治療学

3.甲状腺乳頭癌のリスク分類とそれに応じた取り扱い方針

1) 隈病院 外科
2) 隈病院 内科

伊藤 康弘1) , 宮内 昭1) , 赤水 尚史2)

内容要旨
甲状腺乳頭癌は概ね予後良好であるが,一部に再発を来して患者の生命を脅かす症例が存在する.どういう症例が予後不良となりうるのかを,初期治療の段階で見極めることが非常に重要である.日本内分泌外科学会編の「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」では乳頭癌の予後に応じて以下のように,リスク分類を行っている.すなわち,1)超低リスク T1aN0M0, 2)低リスク T1bN0M0,3)高リスク 4 cmを越える腫瘍径,Ex2に相当する腺外浸潤またはリンパ節節外浸潤,3 cmを越える転移リンパ節,臨床的な遠隔転移のうち一つ以上を有するもの,そして4)中リスク 1)〜3)のどれにも該当しない症例である.しかし,この分類には重要な予後因子である年齢が入っておらず,55歳を年齢カットオフ値として解析すると,疾患関連予後は超低/低リスク症例,若年者の中リスク症例,高齢者の中リスク症例および若年者の高リスク症例(この二群間の予後に有意差なし),そして高齢者の高リスク症例の順に不良であった.超低/低リスク症例は年齢に関係なく予後良好であるので過度に広範囲な手術は行うべきではない.若年者の中リスク症例である程度遠隔再発の可能性ありと考えられる場合は,再発発見とその場合の対応を考え甲状腺全摘を施行することが望ましいであろう.高齢者の高リスク症例の治療は認知機能,全身状態(performance statusなど)を考慮して個別に判断すべきである.

キーワード
甲状腺乳頭癌, 予後, リスク分類, 治療


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