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日外会誌. 123(1): 47-52, 2022


特集

Modern Surgeon-Scientistによる恒常性維持器官の外科研究

7.重症心不全に対する再生医療―iPS細胞から作成した心筋細胞シート―

大阪大学大学院医学系研究科 

澤 芳樹

内容要旨
重症心不全に対し,弱った心筋の機能を回復することができる新しい治療法として心筋再生治療が期待されている.われわれはiPS心筋細胞を用いて,心筋細胞シートを作成し,大動物心不全モデルを用いた同組織のProof of Conceptも示してきた.iPS細胞由来心筋細胞シートは,レシピエント心と同期して挙動しており,同組織の拍動がレシピエント心に対して直接作用する可能性がある一方,同組織から肝細胞増殖因子をはじめとしたサイトカインが分泌され,移植した臓器に血管新生を起こさせ,血流の改善がおこることも示してきた.
これらの研究開発の背景のもとに,本細胞の心不全への臨床応用への準備として安全性の検討,細胞の大量培養法の開発を進めてきた.大量培養法に関しては,すでに基本技術は開発されており,臨床応用化に成功した.また同時に同細胞の安全性の検証として,いわゆる規制科学として未分化細胞のマーカー,およびNOGマウスを用いた造腫瘍性に関わる安全性の検証システムが確立した.また,造腫瘍性に関する安全性だけではなく,分化誘導後に癌化を促す遺伝子異常が発生していないか検証するシステムも構築されており,iPS細胞臨床株における大量培養,高効率分化誘導とともに造腫瘍性,遺伝子における安全性が検証しえたいま,医師主導治療が開始された.まさに,心不全患者への臨床応用が始まろうとしている.

キーワード
重症心不全, サイトカイン, iPS細胞由来心筋細胞シート

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