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日外会誌. 121(3): 329-333, 2020


会員のための企画

全身用立位CTの開発と臨床応用―健康長寿の時代を迎えた今,機能異常の早期発見を目指して―

1) 慶應義塾大学 医学部放射線科
2) 慶應義塾大学 整形外科

陣崎 雅弘1) , 山田 祥岳1) , 横山 陽一1) , 名倉 武雄2) , 成田 啓一1) , 中原 健裕1) , 山田 稔1)

内容要旨
立位CT(Computed Tomography)の第1号機が,当院に導入された.立位CTは1972年にCTが開発された直後から発想されていたが,当時のCTは撮影時間が非常に長く,立位の姿勢で安静を保つことが難しかったため,実現してこなかった.近年,CTの撮影時間が大幅に短縮したため,立位でのCTが実現可能と考え,企業と共同で立位CTを開発した.
導入後に,このCTは,従来の臥位CTと同等の物理特性を持ち,正確な上下運動により臨床で使用可能な画質を担保できていることを検証した.また,必要な設置面積が従来のCTの3分の2で済み,また,ガントリーに入ればすぐに撮影を開始できるので,X線撮影のようなワークフローで検査が行えることがわかった.
健常人での検討では,静脈の体位による変化が部位により異なることがわかり,今後画像での静脈学を構築する端緒についたと思う.また,これまで脳や骨盤は体位により位置が変化しないとされてきたが,われわれの検討では正常人でも立位で下垂していることがわかり,重力下の人体の構造が少しずつ明らかになってきている.現在,疾患への応用を始めたところで,運動器疾患,ヘルニア・臓器脱などは定量的に評価可能であることを明らかにした.また,嚥下・呼吸・排尿・歩行機能などの様々な機能の解明とそれに関連する病態の早期発見に有用な所見の検討,更には加齢性変化も検討しており,健康長寿の時代のニーズに貢献できることを目指したい.

キーワード
立位, 臥位, 重力, X線, Computed Tomography

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