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日外会誌. 121(2): 158-163, 2020


特集

臓器移植の現状と展望

2.心移植

東京大学大学院 医学系研究科心臓外科

小野 稔

内容要旨
1999年2月に法律に基づく心臓移植が開始されて以来20年以上が経過した.2010年7月から改正臓器移植法が施行され,それまで非常に限られていた心臓移植が年間50例以上施行されるようになった.当初懸念された遠隔成績も10年生存率で約90%を維持していて,国際的に極めて優れた成績となっている.植込み型補助人工心臓が2011年に心臓移植の橋渡し目的で保険償還されたことによって長期の安定した移植待機が可能となり,移植登録希望者が急速に増えることになった.限られた脳死臓器提供数と相まって,2018年の平均移植待機期間は1,310日と3年を超えた.小児の心臓移植は国内での実施は極めて困難で,海外渡航移植に依存せざるを得ない状況が長く続いた.臓器移植法が改正されて小児からの臓器提供が可能となり,また小児用補助人工心臓が2015年に保険償還されたことも影響して,小児心臓移植は2017年から急速に増加してきた.抗HLA抗体(特にドナー特異的抗体:DSA)の検査が身近になり,抗体関連拒絶反応(AMR)の病理,DSAの関与,転帰,治療についての知見が蓄積され,わが国の心臓移植の日常診療においてもようやくDSA,AMRの重要性が認識されるに至った.これらの新しい知見に基づいた移植医療は,今後さらに優れた長期成績を可能にするものと期待される.

キーワード
心臓移植, 脳死臓器提供, 補助人工心臓, マージナルドナー


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