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日外会誌. 121(1): 39-47, 2020


特集

蛍光ガイド手術の現状と展望

6.心臓血管外科領域における研究と展望

高知大学医学部 外科学外科二

渡橋 和政

内容要旨
心臓血管外科領域においては,indocyanine green(ICG)蛍光造影は脈管の血流評価や組織の灌流評価で用いられる.放射線被曝もなく繰り返し術野で評価ができるメリットがあるが,蛍光の組織透過性が乏しい(特に皮膚や脂肪織)という弱点がある.冠動脈バイパス術では,グラフトの開存や狭窄を術中に評価できるため,グラフトの開存率向上に役立つ.transit-time flowmetryによる評価と乖離がみられることがあるが,報告ではICG造影による評価の方がより信頼されている.しかし,定量的評価は十分確立しておらず,輝度曲線の解析も自動化が待たれる.閉塞性動脈硬化症など末梢動脈病変に対しては,血行再建術のグラフト評価に用いられることが多いが,皮下トンネル内のグラフトは見えないため吻合部付近で評価する.また,下肢虚血を体表から評価する方法も行われており,潰瘍を伴う病変ではdebridementの範囲を決定したり血行再建の評価に用いられている.ABIのように動脈硬化の影響を受けずに灌流を評価できるメリットがある.リンパ系では,主にリンパ浮腫を対象に,リンパ浮腫の鑑別診断,リンパドレナージの効果判定,リンパ管静脈吻合の場所の決定や吻合の評価などに用いられている.メリットを活かす一方で弱点を理解しそれを補う方策を準備しておくことで,治療成績の向上に寄与できるだろう.

キーワード
indocyanine green, 蛍光, 冠動脈バイパス術, 末梢動脈疾患, リンパ浮腫


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