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日外会誌. 120(3): 297-303, 2019


特集

外傷外科を取り巻く最新のトピックス

5.Damage control surgery

日本医科大学 救急医学,日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター/ショック・外傷センター 

松本 尚

内容要旨
ダメージコントロール手術(damage control surgery:DCS)は,短時間で止血と汚染制御のみを行う重症外傷に対する緊急避難的な手術である.術者に要求されるのは,パッキング,血行遮断,縫合のような止血手技を駆使しながら,如何に早く手術を終了させるかの工夫である.この概念が導入されたことで重症外傷の救命率が飛躍的に増加した.DCS施行の決断基準は,①<34℃の低体温,②pH<7.2の代謝性アシドーシス,③PT/APTT>1.5INRの出血傾向の三つとされるが,これらが揃った時には既に回復不可能な凝固障害に陥っていることが多く,凝固機能が破綻する前にDCSの決断をすることが推奨されてきた.最近では早期のDCS決断による合併症も報告されており,行き過ぎた適用の見直しが始まっている.現在,無作為前向き調査研究が実施されており,その結果に強い関心が集まるに違いない.しかしながら,「一旦“撤退”し,態勢を立て直して後に“再び攻めに転ずる”」というDCSの極意は普遍的であり,救急・外傷外科の治療戦略として重要視される.「撤退する勇気」こそ,DCSを成功させるためのキーポイントである.

キーワード
ダメージコントロール, パッキング, 凝固障害, 救急・外傷外科

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