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日外会誌. 120(3): 276-281, 2019


特集

外傷外科を取り巻く最新のトピックス

2.Damage control resuscitation

佐賀大学医学部 先進外傷治療学講座・外傷外科

井上 聡 , 永嶋 太

内容要旨
外傷外科学は欧米では戦争の歴史と共に発展を遂げ,今日の外傷診療の柱の形成に大いに貢献した.本邦においてもJATEC(日本外傷初期診療ガイドライン)の普及により,徐々に外傷診療レベルが向上した.しかしながら,日常的に外傷診療に従事していない一般外科医には,未だ外傷診療の特殊性が十分に理解されていないのが現状である.
重症外傷患者の死亡原因の大半が大量出血による循環の破綻によるものであり,持続する出血をコントロールできなければ,患者救命は困難を極める.患者救命のためには,循環動態を維持しつつ,できるだけ早期に適切な止血を完了させ,その後の集中治療により,破綻した凝固機能,代謝異常,臓器障害の改善を図ることが重要である.1980年代より重症外傷に対するDamage control surgery(DCS)が発展し,現在では重症外傷の手術戦略のゴールドスタンダードとなっている.Damage control resuscitation(DCR)とは近年,徐々に明らかにされている重症外傷における凝固異常の病態生理や循環動態の蘇生,迅速な止血法などを適切に取り入れ,低血圧容認と制限輸液,凝固機能障害の蘇生,DCSとアシドーシスの補正といった骨組みを包括する重症外傷患者に対する治療戦略である.DCRの適切な遂行により,今後さらに重症外傷患者の救命率の向上が期待される.

キーワード
Damage control resuscitation, 重症外傷, 外傷急性期凝固障害, Damage control surgery

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