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日外会誌. 119(3): 307-311, 2018


会員のための企画

外科疾患における胎児治療の現況とトピックス

大阪大学大学院 医学系研究科外科学講座小児成育外科学

奥山 宏臣

内容要旨
出生前診断される疾患の中に,胎児治療により救命できる疾患や機能的予後の改善が期待できる疾患が存在することが明らかになってきた.出生前診断された外科疾患の治療方針は①児の成熟を待って分娩後治療開始,②早期娩出後治療開始,③EXIT法(Ex Utero Intrapartum Treatment:胎盤循環下での胎児気道確保),④胎児治療のいずれかである.今回は種々の外科疾患に対する胎児治療の現況につき述べる.
先天性肺気道形成異常(Congenital pulmonary airway malformation:CPAM):中枢から末梢気道の発生異常で,母体のステロイド投与,胎児の嚢胞穿刺,嚢胞羊水腔シャント留置が標準治療となりつつある.胎児肺葉切除は侵襲が大きく今後の課題である.
先天性横隔膜ヘルニア:高度肺低形成症例に対して胎児鏡下バルーン気管閉塞術(fetoscopic tracheal occlusion:FETO)により肺胞液を肺内に貯留させ肺拡大を図る治療が行われている。現在欧州にてランダム化比較臨床試験が進行中である.
仙尾部奇形腫:28週未満で急激に増大する場合胎児の腫瘍摘出術が考慮されるが,より低侵襲な栄養血管の焼灼やコイル塞栓も試みられている.
出生後の気道確保が困難な疾患:帝王切開時に胎盤血流を維持したまま胎児の頭頚部を子宮外に出し気道確保するEXIT法が実施される.
脊髄髄膜瘤:胎児期修復術のランダム化比較臨床試験にて,出生後の神経学的予後が改善することが明らかになり,米国を中心に臨床応用が始まっている.
胎児治療は胎児だけでなく母体にもリスクがあり,適応には慎重であるべきである.現在各術式で臨床応用が広がりつつあるが,今後は治療成績を評価し,適応基準や安全性を確立することが必要である.

キーワード
胎児治療, 新生児外科, 先天性横隔膜ヘルニア, 嚢胞性肺疾患, 脊髄髄膜瘤


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