[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (583KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 118(4): 414-421, 2017


特集

大腸癌診療の最近の動向

5.大腸癌に対する重粒子線治療法

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構,放射線医学総合研究所病院 

山田 滋 , 磯崎 由佳 , 川城 壮平 , 鎌田 正

内容要旨
重粒子線は陽子線の優れた線量分布に加えて,粒子が重いことから,より強力な殺細胞効果を有する放射線である.この特性により,癌の周囲にある放射線感受性の高い臓器を避けて腫瘍のみを狙い撃ちにすることが可能であると同時に,従来X線や陽子線に抵抗性であった癌細胞(腺癌や肉腫など)にも殺細胞効果が高い.
放射線医学総合研究所(放医研)では2001年から直腸癌術後局所再発に対する重粒子線治療を開始した.73.6Gy(RBE;relative biological effectiveness)で治療した197例では5年局所制御率89%で5年生存率は52%と外科的治療法に匹敵する良好な成績であった.さらに最近では消化管近接例に対しスペーサーを用い治療を施行している.91例の解析では5年局所制御率は90%,5年生存率は30%であった.また,X線治療後の直腸癌術後骨盤内局所再発に対する再照射としての重粒子線治療も施行している.67例の解析では,Grade3以上急性期障害は7例,遅発性障害は13例に認められた.生存率は3年で65%,5年で42%と良好な成績であった.重粒子線治療はX線治療後の再発症例に対しても有効な治療手段であることが示された.

キーワード
放射線, 重粒子線, 大腸癌, 術後再発, 転移

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。