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日外会誌. 117(6): 516-522, 2016


特集

乳癌診療の現況からみた将来

7.バイオマーカーとその意義

兵庫医科大学 乳腺・内分泌外科

藤本 由希枝 , 三好 康雄

内容要旨
乳癌の術後に検索されるバイオマーカーは,エストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR),ヒト上皮増殖因子受容体2型(human epidermal growth factor receptor type 2:HER2),増殖マーカーのKi67である.免疫組織染色(immunohistochemistry:IHC)によって評価され,ERとPgRは1%以上を陽性,HER2は3+(2+はin situ hybridization法で+)を陽性とし,それぞれ内分泌療法,抗HER2療法の適応としている.Ki67のカットオフ値は20%が一つの目安であるものの,評価法の標準化が困難であるため至適なカットオフ値は示されていない.これらのバイオマーカーは薬剤の適応を決めるばかりでなく,サブタイプ分類にも活用され,サブタイプごとに腫瘍径,リンパ節転移やグレードなどの臨床病理学的因子を含めて術後療法が決定されている.そして,ER陽性・HER2陰性乳癌をKi67とPgRによってluminal Aとluminal Bに分類し,化学療法の適応が判断される.また,多遺伝子の発現解析に基づいて化学療法の適応を決定する診断法も開発され,臨床応用されている.転移巣においてはしばしばバイオマーカーが変化するため,可能であれば転移巣での検索が推奨される.免疫組織染色によるバイオマーカーの評価は検体の処理条件や用いた1次抗体によって影響を受けることから,精度管理が重要である.これらのバイオマーカーの臨床的意義を十分理解した上で,治療選択を行うことが求められる.

キーワード
乳癌, バイオマーカー, エストロゲン受容体, HER2, Ki67

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