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日外会誌. 117(6): 509-515, 2016


特集

乳癌診療の現況からみた将来

6.センチネルリンパ節生検と腋窩郭清

北海道がんセンター 

高橋 將人

内容要旨
ハルステッド氏が乳癌の標準術式として乳腺だけではなく胸筋および腋窩を切除する手術を提唱した.その100年後乳癌におけるセンチネルリンパ節生検の有効性が提示され,センチネルリンパ節生検で転移陰性の場合は,腋窩郭清を省略することが乳癌の標準術式として確立された.近年センチネル転移陽性の場合でも腋窩郭清省略を選択する妥当性も報告されるようになり,腋窩照射を含めた選択肢が登場し治療がより複雑化している.
センチネルリンパ節転移陽性症例に対する治療法選択は,転移個数や程度などにより安全に腋窩郭清省略を選択可能かどうか判断する.微小転移の場合は腋窩郭清の必要はないと判断できるが,マクロ転移の場合にはZ0011の適応症例などを参考に郭清省略可能な症例を選択していく必要がある.
腋窩リンパ節郭清を行った場合は,程度の差はあれ,上腕浮腫,肩関節可動域障害,神経障害などの合併症が起こりうる.肩関節可動域は早期のリハビリテーション開始にてある程度予防可能である.リンパ浮腫に対しては,爪を含め清潔保持,保湿を心がける等にて管理するが,外傷や感染に対しては抗炎症剤や必要に応じて抗菌剤等で早期に対処する.発症したリンパ浮腫に対しては,用手的リンパドレナージ(manual lymph dranage:MLD)や弾性包帯や弾性スリーブを用いた圧迫療法下に,適切な指導のもと運動療法を併用などの複合療法の有効性が報告されてきている.

キーワード
センチネルリンパ節生検, 郭清省略, 腋窩郭清, リンパ浮腫


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