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日外会誌. 117(4): 316-322, 2016


特集

機能温存を目指した胸部悪性腫瘍手術の現況と将来

8.胸膜切除/肺剥皮術

兵庫医科大学 呼吸器外科

橋本 昌樹 , 長谷川 誠紀

内容要旨
悪性胸膜中皮腫は石綿曝露によって発生する胸膜の極めて予後不良な悪性腫瘍である.悪性胸膜中皮腫に対する手術は壁側胸膜と片肺を一塊にして切除する「胸膜肺全摘術」と壁側胸膜と臓側胸膜のみを切除し肺実質を温存する「胸膜切除/肺剥皮術」の二つの術式がある.胸膜肺全摘術は腫瘍が存在する胸腔内に入ることなく切除が可能であるため根治性が高く,本邦でも第1選択として行われてきた.しかしながら手術侵襲が非常に大きく,術後のquality of life(以下,QOL)が著しく低下することなどにより,欧米諸国では胸膜切除/肺剥皮術が主流となっている.胸膜切除/肺剥皮術は胸膜肺全摘術に比べて手術手技は煩雑であるが,手術侵襲が比較的軽度である.また肺実質を温存するため心肺機能の低下は少なく,術後は比較的良好なQOLが期待できる術式である.一方で,腫瘍が存在する胸腔内で肺実質より臓側胸膜を剥皮するため腫瘍の局所制御率が胸膜肺全摘術よりも劣り,局所再発の頻度が高いことが欠点である.しかし術後のQOL低下が少ないため,再発後も十分な治療が出来ることも多く,予後も長い傾向にある.胸膜切除/肺剥皮術は胸膜肺全摘に比べて忍容性が高く,明らかな生存期間の延長が認められれば本邦でも第1選択として広く行われる可能性が高い術式である.

キーワード
悪性胸膜中皮腫, 胸膜切除/肺剥皮術, 集学的治療, QOL


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