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日外会誌. 117(4): 301-307, 2016
特集
機能温存を目指した胸部悪性腫瘍手術の現況と将来
6.原発性肺癌における胸壁・横隔膜合併切除術
内容要旨
原発性肺癌の外科治療において,隣接臓器合併切除の対象となり呼吸機能等に大きく関わるのは,現在T3に区分される臓器である胸壁と横隔膜である.胸壁および横隔膜合併切除の頻度は,2013年の肺癌切除例においてはそれぞれ1.6%(肺尖部胸壁浸潤癌を含む),0.3%であった.胸壁浸潤の診断は胸痛などの症状と画像診断により概ね可能であるが,横隔膜浸潤の治療前診断法は確立されていない.外科治療の対象としてはどちらもN0-1例がよい適応となるが,肺尖部胸壁浸潤癌においては同側の鎖骨上窩リンパ節転移例も含まれることがあり,また本腫瘍に対しては術前化学放射線療法がなされるのが一般的である.胸壁合併切除は,壁側胸膜までの浸潤例では胸膜外切除が可能な場合があるが,肋間筋および肋骨浸潤例では骨性胸郭切除を行う必要がある.再建は骨性胸郭欠損の部位と大きさにより適宜行い,奇異呼吸などの呼吸障害に備える必要がある.横隔膜合併切除では,例え全層切除を行ったとしても多くは直接縫合が可能で,広範に切除した場合のみ何らかの材料で補填する必要がある.手術関連死亡率は胸壁1.8~7.8%,横隔膜0~2.0%,それぞれの5年生存率は30~40%および20~40%程度と報告されている.胸壁および横隔膜浸潤肺癌の頻度は少ないとはいえ,外科切除を含めた新たな集学的治療を開発することにより,これら患者の予後のさらなる改善を期待したい.
キーワード
原発性肺癌, 胸壁, 横隔膜, 隣接臓器, 合併切除
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