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日外会誌. 117(4): 289-295, 2016


特集

機能温存を目指した胸部悪性腫瘍手術の現況と将来

4.血管形成術

順天堂大学 呼吸器外科

鈴木 健司

内容要旨
胸部悪性腫瘍に対する手術で用いる血管形成は,肺動脈形成術,上大静脈形成術(左右の無名静脈を含む),肺静脈形成術,大動脈形成術ということになるが,機能温存を目指したと言うことになれば主に肺動脈形成術となる.複雑気管支形成術で稀に肺静脈形成術を行うが,これはきわめて稀な状況である.肺動脈形成術には,中枢または末梢の血管遮断,縫合,空気抜きなど様々な技術的なポイントがあるので文献を元に,私見を交えて紹介する.肺動脈の形成にはもっともシンプルな連続縫合,心膜または人工物を用いたパッチ閉鎖,そして端々吻合がある.これらの手技のいずれを用いるかに関しては普段の慣れもあるが,状況に応じて使い分ける必要がある.解剖学的な理由から肺動脈形成術は左肺上葉切除に伴って行われることが多いが,この際に特に留意する点は閉胸後の肺動脈の屈曲である.左肺下葉は想定以上に含気をもつと広がることがあり,これによりもともと長めに存在する肺動脈が屈曲する恐れがある.また最近は端々吻合の際に心膜でのconduitまたは切除肺の肺静脈をinterpositionする方法などが報告されており,その中長期成績も良好である.もっとも侵襲的である肺全摘術を回避するために必要な気管支形成術とともに肺動脈形成術はすべての呼吸器外科医に必須の技術である.

キーワード
肺動脈形成, 気管支形成, 端々吻合, パッチ閉鎖, 連続縫合

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