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日外会誌. 117(4): 278-282, 2016


特集

機能温存を目指した胸部悪性腫瘍手術の現況と将来

2.部分・区域切除術

兵庫県立がんセンター 呼吸器外科

吉村 雅裕

内容要旨
肺葉切除術が肺癌の標準術式となって半世紀余りとなる.一方,区域切除術や部分切除術の縮小手術にも同様の長い歴史はあるが,その対象は低心肺機能や高齢者等のpoor-riskで且つリンパ節転移の無い症例に限られた.1995年にLung Cancer Study Group(LCSG)がprospective randomized studyで,肺葉切除と縮小手術の予後に差はないが後者に局所再発が多いことを示し,肺癌に対する標準手術は肺葉切除術と結論した.しかしながら,縮小手術群の1/3にリンパ節郭清を伴わない部分切除が選択されたこと等,多くの問題点が指摘された.一方,それまでの報告においても,解剖学切除である区域切除術と肺葉切除術で5年生存率に有意差の無い一群の存在は示されていたが,術式による局所再発の差が問題として指摘されていた.この問題解決のためには患者選択の厳格化,所属リンパ節の適切な郭清,surgical marginの充分な確保が必要不可欠と考えられたが,本邦発のprospective studyが,術中迅速病理診断の多用など手技が厳格に遵守されれば,区域切除術が末梢早期肺癌に対する標準手術となりうる可能性を示した.
Japan Clinical Oncology Group(JCOG)はthin section CT画像で肺腺癌の浸潤性の検討(JCOG0201試験)結果を基に,最大腫瘍径≦2cm且つC/T比≦0.25(※)を対象とした「部分切除(JCOG0804試験)」と最大腫瘍径≦2cm且つC/T比>0.5を対象とした「肺葉切除術vs区域切除術(JCOG0802試験)」を行っている.両試験とも症例登録は終了し,2020年にフォローが終わる予定である.末梢早期肺癌に対する縮小手術の有用性が示される可能性は充分あるが,今しばらくは標準術式を肺葉切除術と規定したガイドラインは継続する.(※C/T比;胸部薄切CTにおける腫瘍充実濃度径Cと腫瘍最大径Tの比)

キーワード
肺癌, 部分切除術, 区域切除術, 縮小手術


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