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日外会誌. 117(2): 130-135, 2016


特集

本邦における低侵襲心臓手術の現況

8.左小開胸からの多枝OPCAB

心臓病センター榊原病院 心臓血管外科

坂口 太一

内容要旨
冠動脈多枝病変に対する外科治療として,わが国ではこれまで胸骨正中切開によるオフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)が広く行われてきた.胸骨正中切開を回避する低侵襲心臓手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery:MICS)は,弁膜症手術を中心に増加しつつあるが,冠動脈疾患に関しては冠動脈バイパス術(CABG)の99%以上が正中切開で行われている.これに対して,左小開胸下に多枝バイパスを行うMICS-CABGが欧米で導入され,近年その良好な成績が報告されている.これは左肋間から直視下に左内胸動脈を採取し,限られた胸腔内のスペースで上行大動脈への中枢吻合と複数の冠動脈の末梢吻合を行う術式で,従来のMIDCAB(Minimally Invasive Direct Coronary Artery Bypass Grafting)と違い,側壁や後下壁も含めた全ての領域への完全血行再建が可能とされている.MICS-CABGは正中切開OPCABと比べ,創感染が少なく術後回復が良好であり,中期のグラフト開存率も良好であるという報告がなされている.技術的なラーニングカーブは明らかに存在するものの,その有用性と低侵襲性から,MICS-CABGは今後冠動脈多枝病変に対する治療オプションの一つになると考えられる.

キーワード
低侵襲心臓手術, 冠動脈バイパス術, オフポンプ, 肋間開胸手術


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