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日外会誌. 117(2): 109-113, 2016
特集
本邦における低侵襲心臓手術の現況
4.低侵襲大動脈弁置換術:現況と今後の展望
内容要旨
心臓外科においても低侵襲化へ向けた試みは時代の流れとなっており,心臓外科の中でも最も標準的な術式の一つである大動脈弁置換術(Aortic Valve Replacement:AVR)においても,低侵襲心臓手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery:MICS)は盛んに行われている.胸骨上部部分切開によるMICS-AVRはもっとも普及したMICS-AVRである.約6~8cmの皮膚切開を胸骨中央部に置き,胸骨切痕から第4肋間の高さまで胸骨を部分切開し,胸骨切開は右第4肋間で終止する.特別な器具を必要としないため,開始に当たってのハードルは非常に低い.一方,右ソケイ部切開により大腿動静脈から人工心肺を確立し,右第3肋間開胸にてアプローチする右小開胸によるMICS-AVRは美容的には非常に魅力的な術式であるが,特殊な器具を要するため開始へのハードルは胸骨部分切開のMICS-AVRに比べると高い.胸骨部分切開にせよ右小開胸にせよ,MICS-AVRの欠点として大動脈遮断時間および人工心肺時間の延長が挙げられるが,現在欧州を中心に普及しつつあるsutureless valveを用いることでその欠点を克服し,真の低侵襲手術として確立されうる可能性がある.今後の発展に期待したい.
キーワード
低侵襲心臓手術, 大動脈弁置換術, MICS-AVR, sutureless valve, TAVI
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