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日外会誌. 117(1): 25-26, 2016


若手外科医の声

日本の臓器移植医療について思うこと

慶應義塾大学 小児外科

山田 洋平

内容要旨
日本の年間推計脳死候補者が4,000~5,000人と試算されているにも関わらず,脳死下臓器提供は未だ年間40~50件を推移している.脳死ドナーが増加しない背景には,脳死という概念が一般の人々に浸透していないこと,さらには臓器提供が終末期医療の選択肢であるという認識がわれわれ医療者側に乏しいということが考えられる.さらには日本人特有の価値観,慎重すぎるともみえる行政,医療不信を煽るマスコミ,または約半世紀前の心臓移植事件などの影響も大きいと思われる.
臓器提供数世界トップクラスの米国は臓器提供候補者が年に推計約15,000人で,その内8,000人がドナーとして臓器を提供している.そんな米国ですら臓器不足は深刻であり,ドナープール拡大のためにドナー年齢制限を引き上げ,心停止・ハイリスクドナーの開拓,altruistic donor(利他的ドナー,レシピエントを特定しない善意からのドナー)の受け入れやドナーのExchange programなどあらゆる試みを進めている.システムもさることながら,おそらくはキリスト教の影響と思われる隣人愛,そして個々のアメリカ人の実行力を日本人として学ぶことも多々あった.
このような米国における移植医療の経験から,“移植が必要な患者の命は自国で救える努力をすること”それは他人に期待するのではなく,自らが行動を起こすことだという信念を得て,ドナーアクションプログラムの推進活動を開始した.日本の事情に即したイノベーションを考え,患者のニーズに愚直に答える努力をしていきたい.

キーワード
脳死, 臓器移植, alturistic donor


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